アマチュア規定

 「2000〜2001年版 全日本アーチェリー連盟競技規則」の表紙にある全ア連のマークから知らない間に「AMATEUR」の文字が消えました。しかし内容は以前とほとんど変ることはなく、アマチュアの概念がなくなったわけではないようです。ただ、外観だけがやっと世界の趨勢に追いついたということでしょうか。
 そんなわけで最近スポーツの世界では死語と化している「アマチュア規定」という言葉ですが、全ア連に所属してアーチェリーを楽しもうとするとなぜか突然この言葉が蘇ってくることがあります。そこでその時のために、予備知識として知っておくのもいいかもしれません。
 昔、時代が明治から大正に変わる頃に「アマチュア規定」の原型は出来上がったようです。その頃は身分差別的色合いの濃い「排除規定」だったようですが、それが戦後になってスポーツ精神を中心とした「論理規定」に徐々に変化していきます。「単に運動競技を愛するために競技を行う者。金銭あるいは金銭に等しい報酬を得ようとする目的のために競技するものを排除」というように、身分や職種の差別や排除ではなく、「金銭を得るか、得ないか」がその境目となっていきます。
 では今回耳にすることになった、日本体育協会の「アマチュア規定」とはどんなものかというと・・・・。1947(昭和22)年に制定された「日本体育協会アマチュア規定」がそれです。1953(昭和28)年と昭和45(1970)年に改正が行なわれていますが、この規定の原型になったのは、1901年に統一されたIOC(国際オリンピック委員会)のアマチュア規定でした。ということは、世界から46年遅れて日本にルールとしてのアマチュア規定が導入されたわけですが、この後1974(昭和49)年にIOCのオリンピック憲章から「アマチュア」の文字が消えますが、これに日本体育協会が対応するのは12年後の1986(昭和61)年でした。
 1986(昭和61)年5月7日、日本体育協会は「日本体育協会アマチュア規定」と「アマチュア・スポーツのあり方」に代わる「日本体育協会スポーツ憲章」を施行しました。そしてこの憲章には、その「制定理由書」なるものが添えられていました。
日本体育協会スポーツ憲章制定理由書 (抜粋)
 この憲章の制定に際しては、まず本会の目的とする「わが国アマチュア・スポーツの統一組織として、スポーツを振興し国民体育の向上を図り、スポーツ精神を養う」ことを基本としつつ、本会加盟団体の意向を尊重するとともに国際的現状をも考慮し、その内容を定めたものである。
 その骨子となる事項は次のとおりである。
1 本会アマチュア委員会は、現行の「日本体育協会アマチュア規定」に基づいて”競技者のアマチュア資格について審議し、判定する”との機能を有しているが、本会加盟団体の意向及び国際的現状等を配慮すると、各競技団体の登録競技者に関する規制は、すべて当該競技団体にその責務を委ねることが適当であるとした。
2 従って、現行の”規定化”を緩和して、規範を示す内容に改めていくことが望ましいとの基本的な見解より、現行の「アマチュア・スポーツのあり方」及び「日本体育協会アマチュア規定」を一本化し、「日本体育協会スポーツ憲章」として改正することにした。なお、本会は”アマチュア・スポーツの統一組織”であることから、あえて”アマチュア”の文字を表現することを要しないとした。
(中略)
〈競技者規程作成のためのガイドライン〉
 この”ガイドライン”は第5条「競技者規程の制定」を受け、本会の加盟競技団体が独自に制定する競技者規程作成のための基準を示したものである。従って、本会の加盟競技団体は、登録競技者に関する競技者規程(又は登録規程)を作成する際、この”ガイドライン”を尊重し制定されなければならない。
 ただし、国際競技連盟に所属する競技団体は、本条項を尊重しつつ当該国際競技連盟の定める規則に準拠し、「競技者規程」を制定できるものとした。
 なお、このガイドラインは次の基本方針により定めた。
1 この憲章の第2条「アマチュア・スポーツのあり方」の精神を基本とする。
2 国際的現状も十分考慮していく必要性から、国際オリンピック委員会制定の1985年版「オリンピック憲章」”参加資格条項”を参考にする。
3 従って、本会は「アマチュア・スポーツ統一組織」であることから、このガイドラインに定める”競技団体の登録競技者の範囲”については、あくまで”アマチュア競技者”の適用範囲について示すに止めた。なお、国際競技連盟の規則において、アマチュア競技者の範囲を超える競技者の登録や大会への参加を認めている場合、当該競技団体がこれを適用するに際しては、当然それら競技者を対象とする”競技者規程”を制定しなければならない。
 この理由書からも想像がつくでしょうが、1974(昭和49)年 IOCがオリンピック憲章から「アマチュア」の文字を削除し「アスリート」とした時から、各 IF(国際競技連盟)はそれぞれの規則範囲内において選手は金銭の授受ができるようになったのです。そして1981(昭和56)年には IOCはオリンピックへの参加資格そのものも各 IF に一任してしまいます。こうなると各競技団体によってプロの参加から、賞金大会、参加報酬授受など現在の状況へと一気に進んできたのです。
 では、金科玉条(?)の憲章とは、
日本体育協会スポーツ憲章 (全文)
 この憲章は、財団法人日本体育協会(以下「本会」という。)の目的とするアマチュア・スポーツ発展のための精神を基調とし、これに基づく本会加盟団体の使命及び本会の加盟競技団体における競技者規程等を定めるための基準を示したものである。
第1条 スポーツの意義と目的
 スポーツは、人々が楽しみ、よりよく生きるために、自ら行う自由な身体活動である。さわやかな環境の中で行われるスポーツは、豊かな生活と文化の向上に役立つものとなろう。
 スポーツをする人は、美しいスポーツマンシップが生まれることを求め、健康な身体をはぐくむことを目的とする。
第2条 アマチュア・スポーツマンのあり方
 ○ スポーツを愛し、楽しむために、自発的に行う。
 ○ 競技規則はもとより、自らの属する団体の規則を遵守し、フェアプレーに終始する。
 ○ 常に相手を尊重しつつ、自己の最善を尽くす。
 ○ スポーツを行うことによって、自ら物質的利益を求めない。
 ○ スポーツによって得た名声を、自ら利用しない。
第3条 加盟団体の使命
 本会加盟団体は、この憲章の趣旨を体して、アマチュア・スポーツの健全な普及・発展をはからなければならない。
第4条 憲章の適用
 この憲章は、本会加盟団体に対して蒙用されるものである。なお、本会の加盟競技団体の登録競技者に対する規程は、当該団体がその責任において設けるものとする。
第5条 競技者規程の制定
 本会の加盟団体は、この憲章に基づき独自の競技者規程を制定するとともに、その規程を本会に届け出なければならない。
第6条 加盟団体の役員
 本会加盟団体の役員は、常に品位と名誉を重んじ、競技者の規範となるよう行動しなければならない。
〈競技者規程作成のためのガイドライン〉
1 本会の加盟競技団体は、アマチュア登録競技者の保護と支援の責任をもつ立場にあることから、この憲章の趣旨を体し、次の条項に準じ競技者規程を制定するものとする。又、国際競技連盟に所属する競技団体は、その当該国際競技連盟の規則に準拠し、競技者規程を制定するものとする。
2 本会の加盟競技団体は、次の者をアマチュア競技者として登録できない。
 (a)いずれかの競技かを問わず、プロ選手又はプロ・コーチとして登録されている者、又は契約している者。
 (b)所属競技団体の事前了承なく競技会参加準備又は参加のために、物質的便宜を受けた者。
 (c)自らが、自分の氏名、写真又は競技実績を広告に使うことを許した者。ただし、当該競技団体の承認を得ればこの限りではない。これに伴う支払いはすべて競技団体宛であり、競技者本人であってはならない。
 (d)本会又は所属競技団体が禁止した競技会に参加した者。
 (e)競技に際して、特にドーピング又は暴力行為などによりフェアプレーの精神に明らかに違反した者。
 (f )この憲章に違反し、競技者として著しく品位又は名誉を傷つけた者
 この「スポーツ憲章」は先の「アマチュア規定」と一見変わりないようには見えるのですが、第4条の「本会の加盟競技団体の登録競技者に対する規程は、当該団体がその責任において設けるものとする。」と第5条の「本会の加盟団体は、この憲章に基づき独自の競技者規程を制定する」というところが曲者なのです。
 この2ヶ所によって日本体育協会はスポーツを愛し、さわやかな環境の中で、美しいスポーツマンシップを謳い上げながら、後は各競技団体にお任せしまーすと、逃げてしまったのです。お陰で中学生でも300万円がもらえるようになり、ある意味お金に対する束縛がなくなったのです。これはアーチェリーも然りです。
 
 では、ここで少し話を変えましょう。
 あなたが写真屋さんに行って見合い写真を撮ったとします。あるいは、家族で七五三の記念写真を写したとしましょう。この時このプリントした写真をあなたはお金を出して購入するわけですが、写真屋さんは写真はくれてもネガまではくれません。なぜなら基本的にあなたを写したという「肖像権」はあなたに存在しても、それを写した「版権」は写真屋さんが保有しているのです。だから写真屋さんは、肖像権を持つあなたの許可を得て版権を利用しているのです。
 では「肖像権」とは、民法上、人は、自分の肖像(写真・絵画・彫刻など)をみだりに他人からとられたり使用されたりすることから守られなければならない。このような人格的利益の側面を肖像権と呼ぶことができ、これを違法に侵害すると不法行為(民法709・710条)。違法性の判断は、報道の自由・表現の自由との関連上微妙な問題を生じる。報道写真で公共性のある者は違法性を帯びないが、公共性のないものについては本人の承諾がなければ違法性を帯びると解される。(法律学小辞典 有斐閣) となります。
 このように肖像権は本来その個人が保有するものであり、スポーツ選手であっても自分の写真なのですから、然りのはずです。ところが競技団体に「プロ」として登録された者以外は、JOC(日本オリンピック委員会)に加盟する競技団体の役員・選手の肖像権はJOCに帰属しているのです。そしてJOCは協賛企業にだけ肖像の利用を認めることで、協賛金名目で選手強化資金を集めるのです。これが1979(昭和54)年に始まった、「がんばれ! ニッポン!」キャンペーンです。しかし先にも書いたように、当時日本体育協会には「アマチュア規定」があり、選手の肖像権によってJOCが経済的利益を独占的に得ることは自己矛盾でもありました。JOCは本来肖像権を持つ選手の意思とは無関係に一方的にその肖像権を奪っていたのです。しかし1986(昭和61)年の「スポーツ憲章」制定によって「アマチュア規定」が実質廃止されることで、今度は企業に所属する選手にとってはキャンペーン自体が問題視されるようになってきたのです。
 この問題に対して自分の肖像権を自由に使いたいと要望したのが、マラソンの有森裕子選手でした。彼女がプロ宣言をした時、最も衝撃を受けたのはJOCでした。日本の有力選手の肖像権を切り売りするJOCの「がんばれニッポン」キャンペーンに反逆したといわれるこの“有森ショック”は、オリンピック競技の選手強化の資金源やその有効性を考える上でさまざまなテーマを提供しました。結果的には、日本陸上競技連盟は”職業として陸上に携わる”選手を以前からプロ選手を認めているテニスやサッカーの競技団体同様に「プロ登録選手」に準じて扱い、それらの選手の肖像権をJOCの拘束から外したのです。これはJOCのキャンペーンとは別に、独自の競技者規程により選手自身の自由な肖像権利用に新たな道を拓くものとなりました。
 ところで新聞やテレビをはじめとする公共のメディアにおいては、選手の肖像権は「報道」として扱われ問題とはなりません。それは報道の自由、表現の自由といった観点からであって、名誉毀損や不公平な表現がないことが前提です。では「雑誌アーチェリー」はというと、これは報道や普及といった理解の元でのアーチェリー連盟と雑誌社との紳士協定ということらしいです。
 では、日本体育協会が各競技団体に下駄を預けた「競技者規程」はというと・・・。
 あなたはあなたが所属し、肖像権を取り上げられている全日本アーチェリー連盟のそれを知っていますか? たぶん、どこのクラブにも一冊はあると思うのですが、B6版の180ページ程度の冊子になった「全日本アーチェリー連盟競技規則」というものがあります。これを注意して見てみると、一番最初の「総則 第102条(資格)」というところに、『本連盟が所管する競技会に参加しようとする者は、本連盟所定の登録競技者であり、別に定める「競技者規定」による「競技者」でなければならない。』と書かれているのです。知っていましたか? そして、「競技者規定」なるものを見たことや、聞いたことはありますか?
 競技規則は見ても、競技者規定を見たアーチャーは少ないでしょう。これは一般に配付されている競技規則には載っていないのです。
 そこでこの際、全文をご紹介しましょう。よく読んでおいてください。
 
  社団法人 全日本アーチェリー連盟 競技者規定
   第1章 総 則
第1条 社団法人全日本アーチェリー連盟(以下「本連盟」と言う)は、財団法人日本体育協会が制定した、「日本体育協会スポーツ憲章」の主旨を体してアマチュアスポーツとしてのアーチェリー競技の普及発展をはかる。
第2条 本連盟の会員(以下「会員」と言う)は、本規定を遵守し、アマチュア競技者として節度ある行動に終始し、もって本連盟及びアーチェリーの名誉を高める為に努力しなければならない。
   第2章 会員登録
第3条 本連盟の会員とは、所定の手続きを経て加盟団体に登録した競技者及び役員をいう。
第4条 本競技者規定は本連盟に所属する全ての会員に適用される。
   第3章 会員の資格
第5条 本連盟の加盟団体は、次に掲げる者を会員とすることは出来ない。
 尚、既に会員であっても、次に該当した場合は会員を取り消さなければならない。
 (1)いかなるスポーツであろうと、プロ選手、プロコーチとして登録されているもの、又は契約しているもの。
 (2)本連盟又は所属する加盟団体の承認を得ず、自らが、自分の氏名、写真又は競技実績を広告に使うことを許したもの。
 (3)所属する加盟団体の事前了承なく、競技会の参加準備又は参加の為に物質的便宜を受けた者。
 (4)授与された賞又は副賞を金銭に換えた者。
 (5)本連盟又は加盟団体が禁止した競技会に参加した者。
 (6)競技に際しドーピング又は暴力行為などによりフェアプレー精神に違反した者。
 (7)この規定に違反し競技者として著しく品位、名誉を傷つけた者。
第6条 本連盟の加盟団体又はその会員が、放送座談会その他の行事に出演、参加を求められた場合は、あらかじめ本連盟に届けなければならない。
 この場合において当該出演者が適当でないと認めた時は、これを禁止する。
   第4章 競技会
第7条 本連盟又は、加盟団体は、競技会を開催するにあたって、他の団体を共催、後援あるいは協賛者として加える事が出来る。
2 加盟団体が賞金付き競技会を開催する場合は、本連盟の理事会の決議を要するものとする。
 但し上限は国際アーチェリー連盟(FITA)の基準に準ずるものとする。
3 競技会を利用して行う商業宣伝は、あらかじめ本連盟の承認を得なければならない。
 但し競技会のプログラム、ポスターを利用する者は、この限りでない。
第8条 本連盟が関係する競技会の賞は、原則としてトロフィー、カップ、メダルなどとする。
 副賞を授与する時は、競技会の品位を傷つけずまた宣伝に利用されないものに限る。
   第5章 報酬等の処理
第9条 本連盟の事前の承認を得て行われた第5条(2)及び(3)項に関し、その結果与えられた金銭その他の報酬は、個人の収益とせず連盟に受領され、その処理については連盟で決定するものとする。
2 競技者が本連盟の承認を得て競技会に参加することによって、又はその成績によって金銭の対価が支払われる場合は、競技者個人の収益とせず、本連盟若しくはその所属する加盟団体によって受領され、その処理については本連盟と加盟団体が協議の上決定する。
   第6章 役員の資格
第10条 本連盟の役員は、常に品位と名誉を重んじ、競技者の模範となるよう行動しなければならない。
   第7章 補 足
第11条 本規則に定めていない事項については、日本体育協会スポーツ憲章を準用するものとする。
第12条 本規則の改廃は、本連盟の理事会で決定する。
付 則  本規定は平成10年6月14日より施行する。
 
 どうですか?! 含蓄のある一言一言です。よく噛み締めて読んでください。
 ところで、全日本アーチェリー連盟に登録しなくてもアーチェリーを楽しめるように、実際には趣味でアーチェリーを楽しむ範疇においては知らなくても良いことかもしれません。今、日本のアーチェリーが始めて一ヶ月の初心者アーチャーがオリンピック選手と同じ弓具を使うように、何か勘違いがあるように思えてなりません。競技をするにはルールやマナーは必要です。そのための知識の習得や組織への参加も不可欠です。しかし、すべてのアーチャーが同じ道具、同じやり方をしなければならないというものではありません。最低限のマナー、常識、そして安全への最大限の配慮があれば100人には100のアーチェリーの楽しみ方があってしかるべきではありませんか。
 ともかくは、お互い品位を失わずにアーチェリーを楽しみましょう!! そしてひとりでも多くの仲間を作りましょう。
 
(ところで、上記表記で「規定」と「規程」が混在しているのは、原文にできるだけ忠実に記載した結果ですので、ご了承ください。)

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