Black Douglas その1

 最近、というかもう数年になりますが、いろいろなメーカーのカタログやインターネットでの情報でロングボウ(木でできた和弓のような細長い弓)や昔のワンピースボウ(木でできた分解できないハンドルとリムがつながった弓)、あるいはハンドル部分が木でできたテイクダウンボウをよく見たり、ニューモデルとして復活したりしているのを見かけませんか? なぜかアメリカやヨーロッパでマニアックではありますが、ちょっとしたブームのようです。
 そこでこの写真を見てください。
 美しいと思いませんか?! 今の金属製のテイクダウンボウが登場したのは1972年、それまでにもテイクダウンはありましたが、ハンドルはこの写真のような木製がほとんどであり、ともかくは木でできたワンピースボウの時代が長く続いていました。1980年代に入って今のような金属製のハンドルがすべてを占めるようになり、今のアーチャーは木製の弓は初心者の練習用を除けば知らないでしょう。
 そんな大昔、弓は性能も重要ですが、それと合わせて芸術品でもありました。カッティングマシンで大雑把な形は削られても、そこからの仕上げは手作りであり、天然木を使うため一本一本木の色も木目もすべてが異なりました。同じモデルであっても世界に一本のマイボウでもあったのです。その美しさは競技場だけでなく、家に飾っても立派な存在感を示したものです。Hoyt、Black Widow、Wing、Bear などなど美しい弓はたくさんありました。
 で、この写真ですが、これは世界の弓の老舗といってもいいScotlandのBorder社の作る「Black Douglas Mirage」というハンドルです。ネットで検索すればいくつも出てくるので以前から興味はあったのですが(買う気まではありませんでしたが)、BowMoreさんなる方からメイルをいただき、このハンドルがどうしても欲しいとのご要望でした。そこで始まったのがこのプロジェクト(?)です!
 
 このハンドルですが、美しさもさることながら、何が凄い(興味を引かれる)かというと、写真でもわかるように今皆さんが使っているリム(ILFやホイットタイプなどと呼ばれる差込形式)がそのまま使えるのです。今世間にあるこの種のハンドルはネジ止めであったり、最新のハイテク素材(高密度ポリエチレンストリングやカーボンアローなど)には対応していないというか、耐久性がないものがほとんどです。それに対してこのハンドルは、最新の素材や高ポンドであってもそのまま取り付けて射てるというものです。それはイコール、試合に出られるモデルです。凄いでしょう。
 Borderはこれまでリムでご存知の方も多いでしょうが、こんなワンピースボウの時代から弓を作り続けているメーカーであり、個人的にも知り合いということもあって、ともかくは作ってもらうことにしました。このモデルの基本は模様(使う木の種類)はあとでお話しますが、まず長さは今のアルミハンドルと同じ25インチから2インチ刻みで15インチのショートハンドルまであり、それぞれ右用と左用が作れます。そしてベーシックなハンドルに対して、スタビライザーやプランジャーの穴やサイトベースを取り付ける穴などをオプションとして追加できます。
 そこでともかくははじめて見る弓です。言っていても始まらないので、Bowmoreさんのご希望のハンドルに合わせて数本を作ってもらうことにしました。製作は一本一本手作りということもあり、予定の1ヶ月少々を超えて2ヶ月ほど掛かってしまいました。
 ちなみに右の写真はBowMoreさんがマイボウを自宅の庭で撮られた写真と、その弓に書かれた製作者のサインです。昔弓をやっていた40歳以上の方なら、こんなカタログの写真が懐かしくありませんか?

 いいっすねぇー。

 というわけで、ハンドルは金属と限ったわけでもなし。昔のワンピースボウの感覚や天然木から生み出される性能は、今の金属や量産品にはない温かみと高性能も秘めているものです。そこで、この後もこのハンドルのことを少しお伝えしていこうと思います。
 お楽しみに。。。

 ふっと、こんなBearのシリーズ広告があったのを思い出して、本棚から引っ張り出してみました。1970年のアメリカの雑誌「Archery World」と「Bow&Arrow」の表4広告です。これも手に入れば飾っておきたい1本ですよ。

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