はじめてのマイボウ

 フォームが一応身について、力もついて、15mくらいなら的を外さないようになると、いよいよ自分の弓を持つ時期です。とはいえ先立つものも必要ですし、自分に合った弓が何なのか、強さや長さはどうするのか、どんな弓をどこで手に入れるのか、、、、これは知識と経験を持った立派な人にアドバイスを仰ぐしかないのですが(そんな良い人が近くにいらっしゃることを望みますが。)、ここではそんなハードルを乗り越えて、いよいよ自分の弓を手にした時の話です。
 今、マイボウといえば当然「テイクダウン」(折りたたみ式のハンドルとリムが分解できる)ボウです。ところがそんな弓が一般化したのは1970年代中ごろからであって、それまでは「ワンピース」ボウと呼ばれる木製の一本ボウでした。当然ワンピースボウでは弓を新しく(交換)する時にはグリップもサイト位置もレストもストリングも、すべてが交換の対象になります。そうなればトップアーチャーであっても、一からその弓に馴染む努力をしなければなりません。ましてや試合中のトラブルの対応ともなれば、テイクダウンボウが生まれたのは必然であり、それが現在のスタンダードであることは当然すぎるくらい当然の結果です。
 昔ワンピースの時、弓を買おうと思えば同じ長さ同じ強さの弓が何本か店にあれば選べました。もしそんな幸運に恵まれたなら、まず見るのは弓の捩れでしょう。真っ直ぐな弓が大前提であり、そのうえで強さやリムバランス(ティラーハイト)を見ます。後は気に入れば買って帰るだけです。ところがテイクダウンボウとなれば、事情は少し複雑です。何10万円もする商品ですから、店の人がちゃんとハンドルとリムをセットして、ちゃんとセッティングをして選んでくれればいいのですが、ハンドルとリムを渡されるだけとなると困ってしまいます。それは自分の責任で、自分がするのが普通のコトなのですよ、と言われればそうなのでしょうが、値段に納得がいけばそのまま持って帰るしかありません。
 ↓そんな弓を持ち帰っての話です。但し、これは最初の仮セッティングであり、この後使いこみながらそれぞれのチューニングをしていくわけです。その詳細は他の関連ページをご覧ください。ここではあくまで基本の少なくとも最初に確認しなければならない、ポイントだけを書きます。また順序も事情によって(例えばリムだけを替えたとか)前後する部分もあります。では、、、
 
■ともかくは、ハンドルとリムをセットして、ストリングを張ってみないと始まりません。
■その前に、ハンドルに付いている「ポンド調整機構」(ネジ)をデフォルトの位置に仮にセットしてください。
 これがヤマハ製の弓なら、1番の接合板(一番厚い板)を取り付けて、ネジをまったく締め込まない位置が「デフォルト」(基準位置であり、表示ポンドを示すリムの角度です。)であり、だれでも簡単に分かります。しかし多分、その弓はヤマハ以外の弓でしょう。もしハンドルとリムが同じメーカーであれば、購入した店でデフォルトの位置、あるいは表示ポンド数を示す規準位置はどこなのかを教えてもらいましょう。問題はハンドルとリムのメーカーが異なり、店の人がセッティングもせず、基準位置も教えてくれなかった場合です。(この場合、こちらにメイルで問い合わせるのはご遠慮ください。なぜなら無限の組み合わせがあり、実際には現物を見ないと正しい判断ができないからです。) 
 そんな場合は仕方がありません。とりあえずは、上下のネジを同じ位置にセットしてみましょう。それもあまり締め込まない、ハンドルとツライチになる位置に上下のネジを固定します。(ネジを締め込んでリムを起こすより、リムを寝かせた状態で使う方が性能的にははるかに安心で安定しているからです。そしてこの締め込まない位置がデフォルトというモデルもあります。) ただし、不必要に緩めた位置でリムを固定することは避けてください。あり得ないことですが、ポンドダウン(リムを寝かせる)し過ぎて、万が一ネジが外れてリムが飛んでしまうようなことになるとケガをすることもあります。しっかりネジがハンドルに掛かっていることを確認してください。
■そしてもうひとつ。これは後で非常に重要になる部分ですが、「捩れ調整機構」を持つハンドルの場合はこの位置もデフォルトにする必要があります。ただしこれはハンドルとリムの精度や相性の要素も加わるため、とりあえずは「中心位置」に合わせます。ワッシャを挟んで調整するハンドルは左右同じ状態に、ネジで調整するハンドルでは目視でリムがハンドルの中央に来るように、左右のハンドルとの隙間を同じにセットします。(実はこの目視というのが位置を決めるには結構精度が高い方法なのです。)
■では、しっかりリムをハンドルに差し込んで、ストリングを張ります。
■まず「ストリングハイト」を合わせます。ストリングハイトはストリングを捻ることで、ピボットポイント(グリップの底)からストリングまでの長さを調整します。(この段階ではストリングの本数は無視します。高密度ポリエチレン製のストリングであれば16本や18本弦が一般的な太さです。)
 ストリングハイトはリムメーカーがそのモデルに対して推奨する高さ(長さ)があるのですが、その範囲は結構広くあくまでも目安にしかすぎません。一般には64インチの弓なら8 1/4〜8 3/4インチ、66インチの弓なら8 1/2〜9インチ、68インチの弓なら8 1/2〜9 1/4インチ程度でしょうが、これは最終的には自分の射ち方や矢のスパインによって調整していくものであり、とりあえずは「8 3/4」インチ(22センチ)前後に合わせればいいでしょう。
 初心者用の弓などでは今でも使うダクロン製のストリングでは、ある程度ハイトが安定するまで、あるいは最初に伸ばしきる必要があるのですが、今の高密度ポリエチレン製(ファストライト等)のストリングでは伸び率も小さいので、ストリングを張った時に両腕で伸ばすか、指で20センチ程度引っ張って離すことを数回行えばストリングハイトは安定します。
■次は「ティラーハイト」です。上下のリムの強さを調整するために、リムの根本からストリングまでの長さを目安にリムバランスを合わせます。
 これもメーカーやモデルによって異なるのですが、ひとつ言えることは、必ず「上リムより下リムが強い」状態にセットされます。ティラーハイトでいえば、上より下が短いのです。
 これはワンピースボウの時は、弓として調整されていたのですが、テイクダウンになりポンド調整機構などが付与されてからはハンドル側で調整するのが一般的になってしまいました。仮に上下がまったく同じリムであったとすれば(そんなことはまずありません。基本的にはデフォルトの状態で、下リムが強く作ってあるものです。)、下のリムを少し起こして(あるいは上のリムを少し寝かせて)下リムを強くしてティラーハイトに差を出します。1ミリから15ミリ程度の範囲で下を短くするのですが、このことが直接性能や的中に影響することを感じるアーチャーは稀です。後でも調整はできるので、とりあえずは10ミリ前後下のティラーハイトが上より短い状態にセットします。
■弓のセッティングが終わったら、次は付属品です。
■まずは「ノッキングポイント」ですが、それを付ける(作る)前に、矢を乗せる「レスト」を取り付ける必要があります。
 この写真はインドアチューニングしたアルミアローを使用しているものです。アルミアローに比べてアウトドアで一般に使用するカーボンアローはシャフトの直径が極端に細くなります。そこで注意しなければならない点は、矢をレストに乗せた状態で、シャフトはクッションプランジャーチップの「ほぼ中央」に触れていることです。完璧にプランジャーチップの中心にある必要はありませんが、例えばカーボンアローで中心にあっても、その同じセッティングで矢だけアルミアローに替えたのでは、シャフトはプランジャーチップの上方ギリギリにあることになります。それではちょっとしたミスや技術的に未熟であると、リリース時にシャフトがチップを外れて大きく的を外すことになります。シャフトに合わせた、そしてノッキングポイントに合わせた位置にレストは取り付けなければなりません。(レストのツメを上下に動かせるレストはいいのですが、そうでないレストの場合はこのようにシャフトを替えた時には、レストを付け替える必要があります。)
 このレストの位置は、特に初めての場合や上下可動できるレストでない場合は、少し試行錯誤が必要でしょうし位置が決まるまでにレストを何個かムダにすることもありますが、それは仕方ありません。
■レストの位置が決まれば、「ノッキングポイント」を付けます。
 これもティラーハイト同様、最終的には個々のアーチャーによって異なりますが、レスト位置に対して「直角より上」に取り付けます。しかしこれはアーチャーのフォームや射ち方、弓具によって大きく異なるのが普通です。
 もし自分のノッキングポイントの高さを知らない段階であれば、とりあえずは直角より5ミリ程度上にノッキングポイントを付けてみましょう。
■ノッキングポイントが付いた後は、クッションプランジャーの調整です。
 出し入れの位置は、基本は「センターショット」あるいはシャフトが少し左を向くようにまずは位置を決めます。
 硬さ(プランジャーのテンション)は言葉で説明するのは難しいのですが、例えばクッションプランジャーがない時代でも矢がきれいに飛んでいたことを考えると、スパイン(矢のサイズ)の選択がそんなに間違っていないのであれば、「硬め」です。柔らかいより硬い方が無難ですし、指で押してフニャフニャ動くようでは実際のシューティングでも動いてしまいます。分からなければ、動く程度で極端に硬くしたところから始めましょう。
 しかしここで気付くと思うのですが、センターショットを合わせるためにはリムの「センター出し」ができていないと合わせられません。ストリングが上下リムの真ん中を通るように、リムが捻れていない状態にリムをセットする必要があります。そのチューニングをするのが2番目に書いた「捩れ調整機構」です。
 最初はとりあえず目視で差し込み位置を真っ直ぐにセットしましたが、実際にストリングを張るとリムやハンドルの精度や相性でそのままセンターが通っているというのは非常に稀です。ワンピースボウならハンドルとリムが一体になっているのが前提でセンターを通してあるのですが、テクダウンボウは同じメーカーのハンドルとリムであってもチューニングする必要があります。
■ストリングを張った弓を立て掛けて、センター出しを調整します。
 弓のモデルによって調整方法が異なるので、やり易い弓やり難い弓はあるのですが、調整自体は結構試行錯誤を求められます。また満足のいく状態までは結構時間が掛かりますが、これは最初にしっかり行っておけば、そのあとよほどのことがなければ触る必要はないので、少し慎重に調整しましょう。
 結果的には写真のように弓の縦方向の中心をストリングが通ればいいのですが(リムが捻れたり、ハンドルが曲がっていないことが前提ですが。)、初心者に限らず多くのアーチャーが知らないことがあります。それはセンタースタビライザーも真っ直ぐにストリングと重なるということです。詳細は別途ページを確認して欲しいのですが、ともかくは「ストリングがすべての中心を通る」のです。それができれば、センターショットを合わせるのもそんなに難しくはありません。
■後は、サイト、スタビライザー、クリッカー等を必要に応じて取り付ければ完成です。これでともかくは短い距離から、試射してみましょう。

 ということで、念願のマイボウでいざ出陣です。実際にはこの後こまごまとしたチューニングはありますが、それは徐々に考えればいいことです。後は安全に注意して、練習に励みましょう。
 幸運をお祈りします!

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