ノウハウ(7) レスト

 言われてみれば当たり前なのですが、意外と気付いていないことがあります。アーチェリーは60〜70センチの棒を飛ばして当てる競技ですが、その棒を支えているのは「2点」なのです。棒は筒から出るのでも、レールの上を滑るのでもありません。2つの接点から、方向とエネルギーを与えられます。それ以外の部分は接してはいません。
 1点はノックであり、ノッキングポイントにつがえられます。そしてもう1点が横にクッションプランジャーがあるにせよ、シャフトが乗せられるレストのツメです。ノッキングポイントがストリングに付いていて、そこに指を掛けアンカーとなり引き手となることや、レストの真下にピボットポイントがきて、グリップとなり押し手になることはここではさて置きます。
 ともかく70mなりを飛んで得点となる矢を支えているのは2点であり、その片方の「点」がレストです。そして矢はノッキングポイントからエネルギー(力)を受けるのに対し、"Rest" は単に乗っているだけの部分にしかすぎません。
 レストの役目は発射台の方向を定めるためにしっかりと矢を支えることと、発射された矢の邪魔にならないことです。非常にシンプルな機能がこの道具には求められます。だからこそこの道具には単純さが必要です。
 方向をしっかり支えるためには上下のガタは不要です。仮にあったとしても、そこにシャフトを置くことで毎回同じ位置にツメがしっかり固定されることが重要です。左右はクッションプランジャーがその役目を果たしますが、ツメは左右にはできるだけ抵抗なく矢の飛翔を邪魔しない構造でなければなりません。
 3枚バネの矢をなぜこのようにつがえるかは初心者の時に習います。ハネがもっともレストにヒット(当たり)しにくい位置(形状)がこのつがえ方です。逆につがえればコックフェザーと呼ばれる雄羽根がレストに直角に位置し、当たりやすくなります。実際にはよほどスパイン(矢の硬さ)が合っていない場合は別にして、ここまでシャフトやハネがレストに寄ることはマレですが、それでもここに矢が通過する空間(隙間)が必要です。この空間を「アロークリアランス」と呼びます。
 矢が通過していく空間でそれを邪魔するものがあります。それがレストとハンドルのウインドウ部分です。もう少し細かく言うと、ヒットするのはレストのツメとレスト本体(ウインドウに貼られたプレート部分)、そしてハンドルのウインドウとそこから突き出ているプランジャーチップです。リリースされた矢はこれらのどの部分にヒットしても的中精度に影響が出ます。特に近年、カーボンアローはシャフトが軽いのでヒットすれば矢が弾かれて弾道が変わります。
 ただし状況にもよりますが、レスト本体やウインドウあるいはプランジャーチップにハネやシャフトがヒットするのは、よほどスパインの選択が間違っているかチューニングがおかしい場合でしょう。それに対してツメだけはシャフトを乗せる必然からもっとも出っぱっているため、正しいチューニングであってもハネがヒットする確率は高くなります。
 レストのツメは矢がそこを通過する時に、仮にヒットしたとしても矢の弾道を変えないものでなければなりません。そのために可動するのです。それもしっかりと矢を支えながらも、発射の後は矢の飛翔に影響を及ぼさない硬さで折りたたまれる(逃げる)必要があります。
 そして折りたたまれたツメは矢の通過後には復元しなければなりません。その方法はスプリングを使ったりマグネットを使ったりとさまざまですが、その前に素材について知っておく必要があります。

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