タブの作り方余話

 2009年5月23日。まずは、今使っているタブ。前回、2004年8月12日に皮部分を換えたタブです。ほぼ5年、10万射近く使ったタブです。手入れは特にしません。濡れた時だけ、ベビーパウダーにまぶすだけです。いい皮(トロ)を使って、自分にあったものならこんなもんです。(一度、ステンレスのボールチェーンが切れたので交換しました。)

 ところで、うわぁー。小物入れの奥を片付けていたら、またまたこんな懐かしいモノが出てきました。昔一生懸命、針と糸で縫ったところは切れて、アンカープレートも塗装が剥がれた無残な姿です。
 たぶん1977年のシーズンまで使っていた、愛用の自作タブです。この後、こちらで紹介の今の樹脂製プレートタブを作り(プレートは、河合壮八さんに作ってもらいました。)、皮だけ交換し続けて現在に至っています。その原型が、今回発見したタブということです。当時市販の「Wilsonタブ」の皮と指のループ部分を自作したものです。そして、書いたように、このタブこそが現在の売れ筋タブすべてのルーツということになります。
 とはいっても、知っている人でも「Wilsonタブ」といえば、合成皮革の「赤い」モデルでしょう。今回のモデルは赤へのモデルチェンジ前の、「金属製」アンカーパットが付いたモデルです。そしてどうしても写真が見つからなかったのですが、それより以前1970年頃には、アンカーパットがない、裏皮にフェルトを使った手のひら部分の形状が異なる、最初の「Wilsonタブ」がありました。お見せできないのが残念ですが、懐かしい。
 
 それはともかく、これとは別に今回特別の事情があって教える選手のために「自作タブ」を作りました。そして思ったのですが、やはり10人いれば10人の射ち方があるように、あるレベル以上になれば、タブの形状もその選手に合ったものを自作するしかありません。
 そこで今回、Wilsonタブの発展型でもある「Cavalierタブ」をベースに使用しました。ところが実際に使わせてみると、アンカーパットが不要であったり、手自体は大きくてもプレート部分は小さく細工が必要など、こまごまと修正が生じます。
 一番苦労(それほどでもありませんが)したのが、プレートの形状変更(削るだけですが)です。それと穴あけとネジのタッピングです。写真のとおりで、アルミをこれだけ削るだけのことですが、金属用のヤスリがあってもちょっと大仕事です。そこで初めてだったのですが、近所のホームセンター(コーナン)に「工作室」なる部屋があるのを思い出しました。いろんな工具を無料で勝手に使わせてくれます。そこへ行けば、電動のグラインダーを使えば10分もあれば完成でした。ただし、最初から満足のいく形にはならなかったので、2度通いましたが、そんなこんなで皆さんも自分にあった最高マイタブを作ってください。

 で、「小指の想い出」です。最近のタブで気に入らないものがあります。それはタブに「小指」をホールド(?)するための、フックのようなものが付いているモデルです。
 40年ずっとアーチェリーをやっていて、一度だけ腱鞘炎になりかけたことがあります。1976年から77年にかけて、いろいろなことがあったのですが、引き手の薬指の根元に痛みが出ました。原因は小指を中に絞り込み過ぎて、薬指に無理が掛かったことでした。そこで当時は、なんとか練習を続けたいので結局痛みのでない方法として一時期アンカーリングで小指を伸ばして射っていました。これは特別の特別の事情です。こんな不幸の最中なら、小指フックは便利な道具だったでしょう。
 しかし結局、この小細工は感心しません。そんな射ち方をしているのを見て、確かロドニー・バストンだったと思いますが(友達です:1977年世界選手権6位)、「小指は首に付けた方がいいよ」とアドバイスをしてくれました。そうなんです。意外と多くのアーチャーが気づいていませんが、3本指のフック同様にフックに参加しない親指と小指の役目は重要です。
 例えばコンパウンドボウにおいては、リカーブボウのような「アンカー」はありません。フックがあごの下に固定されるのではなく、空間に浮いた状態になります。これが許されるのは「ピープサイト」(ストリングサイト)という「2点照準」があるからです。それはリカーブにおける「キッサーボタン」を考えてもいいのですが、キッサーはあくまでアンカーを補助する道具です。ところが、キッサーに頼りすぎるとアンカーが疎かになります。キッサー=アンカーになり、フック(アンカー)が浮いていても射てるのです。(この良し悪しはともかくとして。)
 リカーブボウの場合、2点照準が認められません。そのため、引き手の手は空間で固定されることは決して良い状態とは言えません。「アンカー」(いかり)をどこかに降ろしてやる必要があるのです。それが人差し指であり、親指であり、小指なのです。メインは人差し指であり親指なのですが、小指を疎かにしてはいけません。小指が首との位置関係を保つからこそ、3本指特に薬指の状態やアンカー全体の位置関係を安定させます。そのためにも、小指は手の中でフックによって完結するものではありません。小指は必ず、手ではなく首との位置関係で完結します。
 この意味は、「Wilsonタブ」がすべてのコピー商品のルーツであるのと同じように、今の流行りが通り過ぎた時に時間が証明してくれるでしょう。。。

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