クレストを貼る

 昔、クレストはプロショップの職人さんに書いてもらうものでした。ところが最近は、自分で貼るものになったようです。
 [ Crest ] を辞書で引くと結構たくさんの意味が出てくるのですが、アーチェリーの場合の「クレスト」となると、「紋章」と訳すのが適当でしょうか。矢(シャフト)に書かれた模様のことですが、一般にはクレスターというモーターの付いた機械でシャフトを回転させて、そこに筆先を置いてペイントするため、実際にはシャフトの周りにリングが描かれたものになります。昔は名前やイニシャル同様に、競技ではルール上義務付けられていた時期もあります。
 クレストは個人個人で異なるため、的面での区別を容易にすることが目的ではありますが、実際にはそれ以上に美しさを兼ね備えたファッション性を無視することはできません。ただし、そこに至った背景には、もうひとつ別の理由がありました。
 昔、クレストが全盛であった時代の1980年代前半まで、矢は現在のようなカーボンシャフトではなく、アルミシャフトでした。もうすでにアルミシャフトもインドア競技か備品の古びた矢でしか見る機会はなくなったのですが、それを知るアーチャーであってもアルミシャフトは「アルマイト処理」されたカラーシャフトでしょう。ところがこのカラーシャフトが登場したのは1974年頃です。それ以前のアルミシャフトは、アルミ素材がむき出しの状態であり、シャフトの種類によっては簡単に錆びてしまったのです。雨の試合の後など、そのままにしておくと表面に白い粉が噴くだけでなく、真っ黒にアルミ内部まで錆びてしまうものもあるような状態でした。
 そこまでひどくはなかったとしても、時間が経てばシャフトの表面が酸化します。そうなると、ハネの接着強度も落ちてくるのです。昔の矢の写真を見れば、リング状のクレストと併せてノックの先端側からリング付近まで白く塗装されているのがわかります。これはクレストの一部であると同時にシャフトの表面に塗膜を作り、シャフトの酸化を抑えハネの接着強度を増すための方法だったのです。
 ここはクレスターではなく、下地用の塗料にシャフトのノック側を漬けていました。後にこの白い塗装はクリア(透明)の塗料に取って代わり、見た目にはクレストのリングしか見えなくなりますが、当時ハネをしっかりと取り付ける(貼る)には、この塗装が不可欠のものだったのです。それが錆びないアルマイト処理のアルミシャフトに替わり、金属でないカーボンシャフトになることで、塗装と一緒にクレストも過去のものになりかけていたのです。
 が、ここに来て少し事情が変わってきました。
 黒しかないカーボンシャフトでは、的面の差別化はハネとノックの色程度になったのですが、それでも区別が付かない場面が特に試合では多々あります。また、シャフトが細くなったことでスポッティングスコープでの確認も難しくなりました。
 そんな状況の中で、接着剤の進歩同様に「シール」も発達してきたようです。薄く、軽く、しっかり貼れるだけでなく、シールの上に接着剤でハネを貼ることもできる素材がいろいろ登場してきました。昔の塗膜がシールに取って代わり、近年「アローラップ」なる商品を生み出しました。お陰で、的前でも90m離れたところからでも簡単に見分けられる、自分だけの「紋章」が復活したのです。
 ということで、「アローラップ」を貼ってみることにします。しかし今回は、ハネをすでに貼った完成矢に紋章として(ハネの部分は貼らずに)クレストを付けてみようと思います。これでも十分に試合中の助けになってくれるでしょう。
 でも、それなら「テプラ」の幅の広いテープに名前を入れて貼っても同じような気がしますが。。。。

 必要なものは、矢と「アローラップ」なのですが、耐久性を考えると「アルコール」で脱脂をすることをおススメします。事前にラップを貼るシャフト表面をきれいに脱脂してください。

 今いろいろな「アローラップ」が販売されています。アルミシャフト用から、カーボンシャフト専用までいろいろありますが、使うシャフトにもよりますがカーボンシャフト用でも少し大きめになっています。大きめということは、貼った時にラップが重なり合う部分が大きいということです。
 重なってもラップ同士は引っ付き合うのですが、あまりその部分が大きいと美しくないかもしれません。
 そこで事前にシャフトの外周に合わせてラップのサイズを切って調整しておくといいでしょう。まったく重ならないようにする必要はありません。1〜2ミリ程度重なるようにすれば、少し曲がって貼ってしまった時でも、きれいにできあがります。
 今回はハネを貼る部分にラップを貼るのではなく、昔の矢のように、あくまでクレストのように完成矢に貼ることにします。
 そこで必要なのは平らなテーブルです。どの位置に貼るにしても、アローラップを置く位置とその上に同じ位置でシャフトを乗せてやるためにテーブルに印を付けてやります。今回はテーブルの端にラップを置き、シャフトに付いているマークを付箋の位置に合わせるようにしました。
 これですべてのシャフトの同じ位置にクレストを貼れます。
 貼るのは本当に簡単です。ただ美しく仕上げるのに、次の点にだけ注意してください。

 ラップの裏紙を剥がしたものを粘着面を上に向けてテーブルに置いて置きますが、ラップを巻きだす位置をシャフトに対して同じにすることです。
 例えばラップが重なり合う部分を裏側に持ってきたければ、最初にシャフトを置く位置をそこにして、ラップの端に乗せて押さえてやればいいのです。
 そしてもうひとつ。どのアローラップの説明書にもちょうど海苔巻きを作るようにシャフトを転がせばいいように書かれています。しかし実際には粘着面の端にシャフトを乗せた時から、少しずつゆっくり転がし、それに合わせてラップの中に空気やしわができないように、指で左右にこすりながら巻いていくことです。難しくはありません。丁寧にしっかりラップをシャフトに巻き付けてやればいいのです。(→この人差し指の動きが大事です。)

 ハネを貼るより簡単です。どうですか。ハネの下に貼るのだけが「アローラップ」(クレスト)ではありません。これだけで十分、試合でも目立てますよ。。。。 残ったラップの端も、ロッドや何かに貼って使えそうですよね。アルミアロー用ラップなら、カーボン用で倍使えます。

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