「アローレスト」余話

第205条(リカーブ部門の用具の通則)

3 調節可能なアローレスト、および移動可能なプレッシャーボタン、プレッシャーポイントまたはアロープレートは、それぞれ1個のみ、弓に取り付けて使用することができる。ただし、これらは電気的または電子的な装置ではなく、照準の助けとなるものであってはならない。
 プレッシャーポイントは、弓のハンドルのスロート部(ピボットポイント)から4cm後方(内側)以内の位置とする。
     (全日本アーチェリー連盟競技規則 2006〜2007年版)
 
 勘違いしていました。というか、そんな文言があるものと勝手に思い込んでいました。
 例えば、言葉で説明するのが難しいので、ちょっと作ってみました。この道具↓を、どう思いますか? レストアップを防止するための、シンプルでありながら確実な方法です。黄色いのは、鳥羽根などのフェザーの切れ端です。
 レストの上に貼り付けられたフェザーは、どう考えても現在のルールブックには抵触しません。「アローレスト」に関する明確な規定がないのです。勘違いしていたのは、競技においてこの道具を禁止する文言が明記されていると、勝手に思い込んでいたのです。
 とはいえ、現実にはこのフェザーは競技において禁止されています。(ただしそれがどの文言によって禁止されているのか、また仮にこのレスト上の鳥の羽根がシャフトに接していない場合、安全のための道具として認められないのか、知っている方がいれば教えてください。)
 1973年グルノーブル世界選手権、実は日本代表選手の1人がこの道具を使い参加しました。というか、国内ではまったく問題にならなかったゆえのことですが、大会前日の弓具検査において取り外さなければ出場できない旨が通告されました。結果は惨憺たるものであったことは、言うに及ばないでしょう。(これはある意味、連盟の無知であり責任であり、同様のことは現在においても起こってはいるのですが。)
 その後の認識として、アローレストとは矢を「置く」道具であり、矢(シャフト)をはさんだり、囲んだりしてはいけないというルールであり、それが明文化されていると勘違いしていたのです。この認識に、ルールとしての間違いはないはずです。
 例えば、この道具はどうでしょう? このグッドアイデアは20年以上前からあったものですが、近年「ネオジム磁石」といったとんでもない磁力を持った磁石が発明されたおかげで、はるかに現実的にアイデアは広がるはずです。この磁石を貼り付けるのではなく、ハンドルのウインドウ内に埋め込んで塗装してしまったり、クリッカープレートあるいはプランジャーチップとして使えば、その効果は絶大です。やり方によっては、レストのツメをなくして、シャフトを宙に浮かすこともできるのです。だからこそフェザー同様に禁止されています。
 FITAがこれを禁止する根拠は、↑左の絵のイメージです。羽根と同じように磁力がシャフトを挟み込んでいるというわけです。そう考えれば、ジャッジが磁力検査をしないことも、無知であり無責任であり、今だ明文化されていないことは、世の中の状況に則していないと言わざるを得ないでしょう。
 ちなみにコンパウンド(ハンティング)の世界では、すでにこんなレストが商品化されているのです。すごいでしょ。
 前置きが長くなりましたが、リカーブ競技においてレストは矢が乗ればいいのです。それ以上でも以下でもありません。それに実際問題として、矢の発射の瞬間にはアーチャーズパラドックスによって、シャフトはツメ方向よりはるかに大きな力でプランジャーチップに押し付けられます。乗っているのは発射までであって、リリースから後はプランジャーチップに貼り付くイメージです。
 アーチャーに技術的な問題がなければ、シャフトはレスト上の「点」で支えられ、シャフトを押さえたり、はさんだりする必要はありません。シャフトが乗る部分さえあれば、それ以上の長いツメは不要です。
 ところで余話の余話ですが、、、日本のアーチェリーの異常さのひとつに競技志向に傾注しすぎることが挙げられます。そのへんの普通のアーチャーが、オリンピック選手と同じ高価な(値段はそうですが、中身は違っていても同じと思い込まされて使っているのですが。)道具を使うのもそうですが、その延長として何でもかんでもオリンピックと同じルールを適用したがります。
 例えば、遊園地のアーチェリーごっこもそうでしょうし、身近では新人勧誘の体験実射や初心者指導もそうです。これらはルールに則る必要もなければ、大事なことは安全にアーチェリーを体験し試してみることが最大目的のはずです。射ってみて、楽しければ続けるのです。そこに厳格なルールや美しい射形も不要です。射って的に当たることが喜びであり、アーチェリーの原点です。
 その意味から考えれば、このフェザーや磁石ほど未経験者や初心者にとって有効なアイデアはありません。初心者が弓を簡単に、安全に射てる道具です。競技ルールは、競技者だけに必要なルールであることを、間違えないようにしましょう。

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