初心者指導マニュアル 2nd End

  Lesson 5
 アンカーを入れるのではなく、アンカーにアゴを乗せてやる。
 アンカーとはアゴを乗せてやるための「台」であり、それはピボットポイント(グリップ)と引き手のヒジの先に真っ直ぐ張られてロープで支えられています。そしてアンカーリングとは、その台(フック)の上にアゴを軽く置いてやる作業のことです。アゴの位置に対して、フックや引き手を操作して行うものではなく、ドローイングで張られたロープが基準にアンカーリングは作られます。
 ところが初心者の場合、力がないこととその感覚がマスターできていないためにアンカーリング時に引き手のフック部分をアゴの下に入れようという意識が強くなります。そのため、せっかくそこまで真っ直ぐに引いてきたロープ(引き手)を緩めてしまったり、引きの力の方向を変えたり、流れを止めてしまうことがよくあります。これではせっかく作られた「流れ」も「方向」も「フックのリラックス」もすべてが台無しになってしまいます。
 「アンカー」という部分を別の動作として考えてはいけません。それはあくまでドローイングの動作の中で連続して行われるものであり、顔に対してフックや引き手を決めるものではありません。引き手の方向に対して、顔を「置いてやる」意識が重要です。
 初心者の場合、フォーム全体を組み立てる意味からも、アンカーの安定感よりも引き手の流れや全体の平面の中でのバランスを重視する方が良いでしょう。

 

  Lesson 6
 フルドローでは顔を真っ直ぐ、頭を傾けずにターゲットと真っ直ぐ向き合う。
 顔(顔面)を一枚の板と思うと分かり易いでしょう。フルドローやエイミングの時、「顔向き」は板(平面)がターゲットフェイス(的面)と真っ直ぐ平行に向き合うことが大切です。
 頭が傾いたり、顔が横を向いたりした状態でエイミングすると、アンカーポイントが身体から離れ「壁」の中に身体を置くことができなくなります。また、その結果ストリングサイトが変化し易く、リリース時にはヘッドアップが起こります。
 アンカーリングしてフルドローを作り出す時、「顔向き」もアゴ同様にドローイングとは別の作業と考えるべきではありません。顔の前まで引かれてきた一本のストリングに対して、鼻と唇とアゴの先端を触れる(付ける)だけでいいのです。そしてそのまま両目で真っ直ぐゴールドを見るのです。力の流れや方向を変えたり、止めてはいけません。
 フルドローでもうひとつ注意したいのは、引いてきたストリングを胸に軽く触れさせることです。これはストリングを鼻と唇とアゴに付けるのと同じ意味を持っています。アンカーでのチェックポイントを増やすことで、安定と平面的なフォームを作り出すのです。そしてアンカーポイントの「引き込み」の意識付けにもなります。胸からストリングが大きく離れることは、引き込みの甘さと平面的なフォームが作られていないことを示しています。
 鼻、唇、アゴ、胸の4点によってしっかりした平面的なフルドローを作るように意識しましょう。そして胸の点は身体の終身線に向かって引き込まれる感じが重要です。

 

  Lesson 7
 リリースを行うのはヒジの先。フックはジャンケンポンで「パー」。
 初心者はすべての点において「白紙の状態」にあります。
 そのような相手に対して指導する場合、「この筋肉をこう使って・・・」とか「この骨をここに持ってきて・・・」と行っても無意味であり、効果はあがりません。ましてやリリースといった「動き」を教えるのは、「固定」を教える以上に難しくなります。そんな時は誰でもが知っている簡単な「イメージ」(感覚)を活用することが、上達を早める不可欠の手段です。つまり、ここまででも述べてきた「鶏の玉子」や「鉤付きロープ」、そして「壁」や「台」などの感覚に訴える方法です。
 ではリリースのイメージはというと、「ジャンケンポン」がもっとも効果的です。要するにリリースの時、右手(フック)も左手(グリップ)も、ジャンケンポンで「パー」を出してやるのです。当然のことながら、引き手は自然な動きとしてストリングが出て行くのと逆の方向に飛びます。その時アーチャーはパーを出すのと同時に、指先を耳の下に持っていくようにします。ただしそれは指先だけが動くのではなく、真っ直ぐに張られた「ロープ」が開いたフックを引っ張って耳の下まで運ぶのです。この意識が重要です。
 多くのアーチャーは指先やフックだけでリリースを考えます。確かにそれはひとつの結果ではあるのですが、ロープが緩んでいたのでは見た目に指先が後ろに飛んでもフックに力が残り、ストリングを弾いてしまいます。
 リリースとはヒジの先端が行う動作であり、それに引かれて指先が動いているにしかすぎません。このことを決して忘れてはいけません。
 身体の中心から左右に押し開かれるように、ジャンケン・ポンでシュートする。リリースを手先だけの動きと考えてロープを緩ませてしまうと、手先そのものも十分にスライディングされず、指も開かずリリースが引っかかってしまいます。

 

  Lesson 8
 フォロースルーは頭を動かさず、シューティングライン上に意識を残して。
 初心者の場合たえず注意されるので、とりあえずはフォロースルー(残身)を残すアーチャーは多いでしょう。しかしそのフォームをよく見ると「頭」が動いているケースが非常に多いのです。頭を下げて視線を落として押し手を見るだけでなく、振り返ってリリース後の引き手を見たり、指導者の顔色をうかがう者までいます。
 しかしいくら射った後のフォームが残っても、頭を動かしたのではすべての位置関係と意識が崩れてしまうのです。それに頭が止まってはじめて、耳の下の指先も確認できます。
 頭はすべての位置と動きを知る中心と理解するべきです。リリースからフォロースルーにかけても、顔は真っ直ぐターゲットと向き合い、ヘッドアップせず、頭はフルドローと同じ位置に固定されます。このことはさらに「心」(意識)がそこに残るという、より素晴らしいメリットをアーチャーにもたらしてくれるのです。
 初心者でも中級者でも、リリース時に矢と一緒に「心」をターゲットに飛ばしてしまう場合が少なくありません。そのためフォロースルーの時、シューティングライン上に何も残らないのです。アーチャーのシューティング練習でもっとも重要で大切なのは「意識」であり「イメージ」です。すべてのフォームは、そのように「しよう」という意識であり、それに伴う「具体的イメージ」の組み立てなのです。このふたつが揃っていなければ、上達はあり得ません。
 指導者の役目とは、初心者に対して多くのイメージと目標を提供し、それを獲得するための手助けをすることです。それを決して忘れてはいけません。

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