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Eagle-K その背景(17)

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「3rd Axis」 「サードアクシス」

「サードアクシス」。リカーブではあまり聞くことのない言葉です。直訳すれば「3番目の軸」ということで、3つの軸(x-y-z方向)のひとつとして語られ、どちらかといえばコンパウンドで使われる言葉です。

コンパウンドでは、スコープのセッティング時に使われます。これはリカーブサイトの発展形としてコンパウンド用サイトに付加された、通常のリカーブサイトにはない方向への調整機能を指します。

従来のリカーブサイトには1軸(1st Axis)と2軸(2nd Axis)の調整(可動)は備わっていたのですが、3軸の可動は必要としませんでした。ところがコンパウンドの場合はレンズを使い、視線がその中心を垂直に通過することを求められるため、コンパウンド用を強調する意味から「3rd Axis」(3軸)を可動できる機能が付加されたサイトが登場したわけです。

このように理論的には「3方向」の動きが存在するのですが、リカーブボウにおいては、2軸すら意識しないアーチャーがほとんどであり、1軸も調整のために付加された機能というより、サイトの構造上必然的に動いてしまう(動かせる)部分です。そのため1軸すら、アーチャーがどこまで意識しているかは定かではありません。

このように理論と実際は異なるのが常であり、理論上の機能が必ずしも実際に必要不可欠かといえば、決してそうではないのです。

そこで今回は「パンドラの箱」を開けてしまった、ハンドルとリムの接合部分における3軸の話です。

まずは、「1st Axis」(1軸)です。

「ポンド調整」機能と呼ばれるものです。ハンドルへのリムの差し込み角度を調整(変更)することで、弓の強さ(ポンド)を変えます。

しかし本来ハンドルに対するリムの差し込み角度とは一定のものであり、これが動くというのは、そのリムが持つ性能や性質自体が変化してしまうことを意味します。ポンドや弓の強さが合えばいい、というものでは決してありません。
ところがこの機能が付加されたことによって、メーカーのリムの仕様はなぜか「2ポンド(偶数)刻み」になってしまいました。パンドラの箱を開けたのは、弓メーカー自身です。その結果、すべてのメーカーは弓の性能と引き換えに、生産の歩留まりを上げ、在庫を減らしたのです。

次に「2nd Axis」(2軸)です。

これは「センター調整」機能と呼ばれ、ポンド調整と同じようにアーチャーが動かすことができます。ハンドルへのリムの差し込みを前後に動かせばポンド調整で、左右に動かすのがセンター調整です。これによって、弓全体のセンターショットをセンタースタビライザーを含め一直線上に合わせます。

しかしこの機能も今では当たり前のように、すべてのハンドルに付加されていますが、もともとはありませんでした。生まれたのは今の差し込み方式「International Limb Fitting」が登場して、数年が経過してからです。

最初ハンドルは「NCマシン」によって、ILFの構造を直接ハンドルに削り込んでいました。しかしそれは精度と共に時間(コスト)も要求されます。そこでメーカーは「カップ付け」という方法で、差し込み部分だけを別に製作して、それをハンドルにネジ止めすることを思い付きました。
しかし、それだけならよかったのですが、このカップを左右に動かすことで「センター調整」ができることに気づいてしまったのです。

「1st Axis」が性能の問題なら、「2nd Axis」は精度の問題です。

1972年に登場したテイクダウンですが、メーカーが初めてそれらしい機能を搭載したのが1980年代後半、ヤマハがハンドルではなくリム側にこの機能を搭載したのは1995年のことです。それも可動幅は0.2ミリです。ところが今はどのメーカーも1ミリ以上動かせて、それを必要とするリムまであるのです。

では、ワンピースボウの時代を含め、テイクダウンボウ初期の時代までこの調整が見逃されていたのかというと、決してそうではないのです。こんな調整を行わなくても、リムはハンドルに真っ直ぐ取り付けられていました。

ワンピースボウの時代は木製の1本ボウなので、当然リムの根元を動かすことはできません。メーカーは1本1本の弓を職人が削って、センターを出しティラーを調整しポンドを合わせていました。すべて芸術品の域に達していたのです。

そしてテイクダウンに時代が変わっても、当初メーカーはそのノウハウを生かしリムは1ペアずつ職人技で仕上げられていました。どのハンドルとどのリムを組み合わせても、センターもティラーも狂いはありません。狂いがあればそれは不良品か、そういうメーカーとみなされました。

ところが、「センター調整機構」と「互換性」のお陰で、メーカーはハンドルが曲がっていようが、リムが捻じれていようが、すべてユーザーの責任でセットしてもらえるのです。昔は規格外だったリムでも、今では商品として出荷することができます。メーカーもショップもこれほど助かる話はありません。

1990年代に入ってもヤマハのハンドルには、センター調整機能は付いていません。HOYTもヤマハもポンドはまだ1ポンド刻みでした。

HOYTとヤマハが築いてきた「世界標準」が消え、「何でもあり」の時代に突入するのはこれから後の話です。

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