ステンと真鍮とアルミと鉄

 ステンレスと真鍮(しんちゅう)とアルミニュームと鉄では、どの金属が一番堅いでしょうか?
 これは難しい質問です。答えが難しいというより、質問の意味が難しいです。「堅い」といわれて、凹みにくさや傷の付きにくさの「硬さ」、「硬度」を思う人もいれば、折れやすさや曲がりにくさといった「固さ」、「剛性」を思う人もいるでしょう。
 それにこれらはいろいろな測定方法がある一方で、試される金属は使われる時には純粋な状態ではなく、ほとんどが合金としていろいろな金属が混ぜ合わされています。
 そこで、以前「重さ」や「剛性」については書いたのですが、今回は「硬度」の話です。そこで一般的ですが、この中で一番硬いのはステンであり、一番柔らかいのはアルミです。ただし、ステンは鉄との合金、アルミは銅などとの合金になることで性質は変わってきます。あくまで一般的な話です。
 
 今回、スコットランド製の「Border」リムの仕様が少し変わりました。
 リカーブの形状やカーボンの組み合わせが変わったのではありません。リムデザインも同じです。変わったのは、ほんの些細なところです。使っている人にしか分からない部分です。が、これを見たアーチャーの多くは、きっと「安っぽい」「コストダウン」などと勝手な判断をするのでしょう。
 変更されたのは、リムをハンドルに止める「ピン」がステンレスから真鍮に変わったのです。今後また変更があるのかもしれませんが、個人的には気に入っています。
 一般的に、硬さはステンレス>鉄>真鍮>アルミニュームです。ステンと真鍮なら、ステンがだいぶ硬い素材になります。もちろん値段もだいぶ高いです。そしてステンは銀色でキラキラしていて、真鍮はくすんだ金色です。そのため、一般的にはステンレスの方が高級ということになるのでしょう。
 では、ステンとアルミでは、どうでしょうか? こちらも一般的にはステンの方が硬く、1円玉のようなアルミを使うなら、真鍮の方がアルミより硬くなります。しかし、アルミのピンはまだ見たことがありません。
 ところが、皆さんが使っているハンドルはほとんどがアルミニュームです。これはマグネシュームよりは重い素材ですが、ステンや真鍮よりは圧倒的に軽いという特徴から使われているものですが、硬さはステンの方が硬いため、ステンのピンでアルミの平面(ハンドルの差込部分のような)をこすれば簡単とはいいませんが、毎日繰り返せばハンドルに溝が彫れるのは、皆さんの方がご存知のはずです。ところが、真鍮のピンならそう簡単ではありません。グッドアイデアだと思いませんか。ピンの交換はできても、ハンドルの溝は埋められませんから。今のようなアルミNCハンドルの前のマグネ鋳造ハンドルの時代は、もっと簡単に溝が彫れました。アルミよりマグネの方が柔らかいからです。
 もちろん素材や先端の形状に加えて、スプリング圧も大きく影響はします。
 今でもよく、スタビライザーのネジ(特にハンドル側のネジ)が鉄製で錆びると文句を言うアーチャーがいます。そのアーチャーは錆びないステンをご希望なのでしょうが、最も力のかかるセンタースタビの根本などは、逆に鉄がオススメですし、ステンなら安い(?)ステンに限ります。高いステンはというと、高硬度の超ジュラルミンなどと呼ばれる「7000番台」のアルミ合金です。これも一時、7000系ジュラルミンハンドルと宣伝していましたが、知らない間に消えてしまったでしょう。使う場所や物次第なのです。ハンドルやネジは硬さだけを求めれば、そこにはしなやかさや柔軟性などはなくなります。ある意味「脆く」なるのです。硬そうに思えても、折れる時はいっぺんに折れます。スタビのネジが曲がっても試合は出られますが、折れればそこで終わりです。エクステンションロッドも同じことです。
 最近はリムデザインと同じで、見た目の派手さや豪華さばかりを競って、本来の性能や性質を考えない製品がたくさんあります。そしてそれらのほとんどは、ノウハウや素材や品質を持たない、コストだけは安いという国で作られています。
 ヤマハが撤退して10年。そろそろ後発メーカーにもノウハウと自覚を身に付けてもらいたいものですが、そのためにもそろそろユーザーも「上得意様」とおだてられることなく、ちょっとした常識とプライドを持って商品を選び、育てたいものです。

copyright (c) 2010 @‐rchery.com  All Rights Reserved.
I love Archery