ハンドルの作り方 その3 (鍛造ハンドル)

   これは何だと思いますか?

 ヤマハのハンドル「フォージド」の元になるアルミ素材です。Forged を辞書で引くと「鍛造」(たんぞう)という意味がでてきます。

 
   2.75kgのアルミ棒をフリクション式プレス機で「3300トン」のプレス圧を2回かけると、こんな形になります。鍛造(たんぞう)の代表の日本刀は熱をかけながら何度も叩き出しますが、ヤマハは特大特製プレス機で一気に金属組織を押し潰すことで、強靭で均一なハンドル素材を作り出します。叩くことで強度が増すのです。

 この時、他のNCハンドルにはないアール(曲面)が成形されます。

 
   鍛造ハンドルはマグネシューム合金同様に型に入れれば、そのまま成形されるように思われがちですが、まず押し潰した素材にトリミング(バリ取り)をかけます。この段階では、まだ穴は空いていないため1.4kgあります。

 この後、はじめてNC旋盤にかけられリムの差し込み部分や軽量のための加工が施され、0.95kgになります。(完成品では塗装や部品の取り付けによって、約1.1kgになります。)

 
   鍛造ハンドルの最大の長所は強度です。鍛造品は強度で10%、靭性で30%、同様の素材に比べて強いと言われています。そのため、断面積を小さくしても充分な強度を確保できることで、結果として一般的なNCハンドルより軽量化された弓を作ることができます。

 そしてもうひとつ、あまり知られてはいませんが実はこの種の鍛造は素材のコストダウンという長所もあります。他のNCハンドルは無垢のアルミ素材を削る出して作るのですが、ハンドルの形状(弓型)を作るには厚さ10cm近い長方体を素材としながら、完成時にはその半分以上がアルミの削りカスとなって無駄になります。それに対して鍛造では、素材の無駄が少ないのです。(とは言っても、これだけ大きいプレス機の設備投資は普通ではありませんが・・・)

 しかし、長所だけでもありません。プレスしたアルミ素材の表面が最初から削り出したものに比べ荒れているため、他のNCハンドルのようなアルマイト加工(電極を付けて液に漬けて塗膜を付ける方法)ができません。そのため、わざわざコストがかかる吹き付け塗装を施さなければならないのです。

 

 

 1992年バルセロナ オリンピック
ゴールドメダリスト S.Flute (FRA)

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