ちょっとグリップ

 最近、グリップにテニスのグリップテープなどのすべり止め(?)を巻いたアーチャーをよく見かけませんか? 流行りなのでしょうか。

 そんなアーチャー達は何の目的でこのようなテープを巻いているのでしょうか。
 弓のグリップ自体をハンドルにしっかり固定する目的で巻いている場合もあるかもしれません。あるいは、グリップの形状を加工した結果、仕上げをする意味から巻いている場合もあるかもしれません。しかし、どの場合でも手とグリップが合わさる部分にテープが存在します。よって結果的には、やはりテープは「滑り止め」のために巻いてある、あるいはそこに「滑り止め」があると理解してもよいでしょう。これはゴルフグローブをして射つのと同じことです。
 では、なぜ弓のグリップに滑り止めが必要なのでしょうか。
 例えばピストル競技のような場合、グリップは選手の能動的動作によって握られ保持されます。そのためグリップは選手の手に合った形に加工されるのが普通です。しかしアーチェリーの場合は状況がまったく異なります。アーチャーは普段弓を持つ時やセットアップまででは意識的にグリップを握っているかもしれませんが、実際のシューティングにかかわるドローイングからフォロースルーに至るまでの間、グリップはアーチャーの能動的意思というよりも、弓のベクトル(強さ)に対する反発として受動的に「支え」られているのです。このことは非常に重要です。弓は握ったり持ったりするのではなく、支えるのです。ということは、セットアップからドローイング、そしてアンカーリングへと移る間に手は自然にグリップの中央部分に滑りこむようにセットされていき、最後に固定されるわけです。
 もしそこにグリップテープのような滑り止めがあると、正確にセットされたグリップであれば滑り難いというメリットはあるのですが、よほど自分のグリップを熟知していないアーチャーでは正しい位置に至る前に滑り止めによって固定がされてしまいます。それは所詮力ずくと道具による固定であり、リラックスしたグリップで144射同じ射ち方を維持することはできません。

 もう少し分かり易い例を挙げるなら、もし試合中に雨が降ってきたり、汗をかいてグリップが濡れて滑り易くなったとします。そんな時、グリップが滑ってずれてしまうようであれば、滑るグリップ(表面)が悪いのではなくグリップの位置そのものが悪いだけなのです。濡れて(滑って)ずれるようなグリップならフォーム自体を治すのが正論であり、解決策です。
 アーチェリーの場合、グリップは滑る(表面がスムーズ)ものなのです。グリップはドローイングでその上を滑り込んでいき、ピボットポイント(真ん中)に収まり固定(支えられる)されるものなのです。そんな手(グリップ)の形と位置を身に付けなければなりません。
 ただし、グリップの形状が悪い(自分に合わない)場合はあります。100人のアーチャーがいれば100の手があり、万人にすべてベストフィットするグリップがあるほうがおかしいのかもしれません。そんな場合は形そのものを改良しなければならない問題であり、グリップテープで止めるのとはまったく意味が異なります。(日本人の一般的な射ち方に対して、どうしても滑ってしまうような扱い難いグリップがあることも事実ではあります。)

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