クリッカーの鳴らし方

 なぜ、多くのアーチャーは自分が初めてクリッカーを取り付けた瞬間から、そこに新しい技術やテクニックが存在するかのように錯覚し、新しい何かを始めるのでしょうか? 実はクリッカーを使いこなすもっとも重要なヒントはそこに至るまでの数ヶ月の間に教えられた初心者指導の中にあったのです。(もし教えられていなければ不幸なことですが・・・)

 初心者指導でリリースする時の技術(状態)として教えなければならないことに、矢のポイントの先端は止まった状態ではなく、また決して緩んでいく状態では発射しないように教えなければなりません。「引き絞られ」ながらリリースはなされるべき動作なのです。和弓ではこの極意を「雨露の離れ」などと教えるようですが、ちょうど葉の上にできた滴の粒が自然と膨らみ自然と転がりだすように弓は放たれるべきだということです。この「引き絞る」動作こそがクリッカーを鳴らす行為と直結しているのです。にもかかわらず、多くのアーチャーはクリッカーを使った瞬間からこの基本を忘れて、まったく別の動作でクリッカーという板を鳴らそうとしてしまいます。

 とはいっても、フルドローからクリッカーが鳴るまでの距離は数ミリです。ポイントの先端の半分くらい、そしてもっとも大切なのは鳴る瞬間はコンマ何ミリという世界であることをアーチャーは知っているはずです。1cmも2cmも伸びる動作ではありません。逆にいえばクリッカーを鳴らす数ミリは、外から見て見えるような動きである必要はないし、あっては決して巧いやり方とはいえないはずです。コンマ数ミリのために押し手の肩や引き手の肘がグイグイ動くようでは安定したシューティングを得ることはできません。感覚的に言うなら(実際はそうではありませんが)骨と骨をつなぐ関節の間のすきまが、ほんの少し開いていく、そんな感じの動作なのです。
 そのためには待っていてはいけません。多くのアーチャーがクリッカーの鳴らない言い訳に「力不足」や「練習不足」を挙げます。しかし、ほとんどの場合それは嘘です。20s近い強さを引っ張りながら、ただ待っているだけで勝手にどんどん力が湧いてくるというようなことは決してありません。待っていれば筋肉は疲労し、引き手は緩み押し手は詰まってくるのが当然の結果です。力不足を言うアーチャーに限って、鳴らす努力をしていないだけなのです。
 では、鳴らす努力、鳴らす方法とはどのようなものなのか?
1)押し手で押す  2)引き手で引く  3)その両方をいっぺんにする、 このどれかの方法しかないのです。アーチャーはどれかを選択し、それに集中することで射つという行為を達成するのです。
 
 多くの複雑なことをいっぺんに実行しようとすることは、すべてのことにおいてあまり良いやり方とはいえません。まして射つという最終段階においては、それを毎回同じように繰り返すためにはシンプルかつ的確な行為が要求されます。この3つの方法の内、どのやり方を選ぶかのポイントは射った後(フォロースロー時)に身体の軸がどう動くか(ブレないか)ということです。アーチャーは自分の身体の中心軸を動かさないようにシューティングする必要があります。もし、射った後で押し手が的に突っ込み過ぎるなら、少し引き手を意識してクリッカーを鳴らすべきです。
 また逆の場合もあり得るわけです。すべてがうまくいっているアーチャーは身体を両方に押し開いているのかもしれません。ここで注意することは、まず方法があるのではなく、うまく美しく射つためにその時の自分にあった方法を選択することです。ということは、年がら年中アーチャーは同じ方法をとる必要はなく、その時期その状態に対して良い結果を生み出す方法を見極め実行しなければならないということです。
 具体的な技術論はまた別の機会に話しますが、ともかくはこの3つの中から選ぶのです。

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