ピンサイトとリングサイト

   サイト (照準器) は 2つに大別されます。ひとつは一般的な「ピンサイト」と呼ばれるタイプで、まわりにリング(フード)がないものもこれに含まれます。それに対して 「リングサイト」と呼ばれるタイプは、ピンがなくまわりのリング(輪)だけで狙うサイトです。
   ピンサイトは特に説明は不要でしょうが、リングサイトについては理解を要します。
   リングサイトがもっとも注目を集めたのは、1972年ミュンヘンオリンピックの時です。この時のゴールドメダリスト、ジョン・ウィリアムス(USA)は他の選手が木製ワンピースボウを使う中、唯一最新のテイクダウンボウにエクステンション、そしてリングサイトで他を寄せ付けない世界記録で優勝したのです。
 それから数年、世界のアーチャーはこの魔法の道具とも思えたサイトにトライを繰り返したのですが、結局それまでのピンサイトを駆逐するには至らず忘れ去れる結果となりました。ところが、1988年ソウルオリンピック、この初めてのオリンピックラウンド導入の大会でジェイ・バーズ(USA)がリングサイトでゴールドメダルを獲得したのです。これで再びリングサイトを使用するアーチャーが増えだしたのです。しかし、リングサイトについての知識や認識がないアーチャーが多いためか、今回もピンサイトに追いつくまでは普及しませんでした。しかし、使い方によっては一層の好結果も期待できる方法であり、リングサイトを知ることはピンサイトを最適に使用するためにも不可欠の条件です。

 指で輪を作り、見たいと思う対象物をその輪の中から覗いてみてください。多分その時、無意識に目標を輪の中心に持ってきているはずです。
 人間の目が持つ潜在的能力です。リング(輪)の中から見た目標(ゴールド)は意識しなくとも、完璧にリングの中心で捕らえられるのです。これはピンサイトで狙うよりも正確にといってもよい精度です。ここでもっとも重要な点は、リングサイトを使用する時は決してリングの中心を意識で探してはいけません。本能に任せて単純にリングの中からゴールドに精神集中するだけでいいのです。ここでもしピンの中心を探したり、意識してゴールドを中心に持ってくる努力をしてしまったら、リングサイトの持つ長所がすべて消えてしまいます。
 リングサイトの最大の長所は、目の生理学的機能を生かし高精度のエイミングを得ながら、それでいて射つ瞬間のサイトのズレがピンサイトのように直接精神に働きかけシューティングミスに直結しないところです。アーチャーは自分の物理的運動に集中でき、精神的トラブルを回避できるのです。
 これこそが、オリンピックラウンド導入以来多くのアーチャーが注目してきた点です。「恐くない」「思い切って射てる」「クリッカーが速く鳴る」・・・・リングサイトの持つ長所は異常な緊張状態に置かれる近年のアーチェリー競技においては救世主的存在なのです。

 それではリングサイトは究極のエイミングサイトなのでしょうか。確かに次の2つの問題を解決するなら、何にも勝る武器となり得ます。
 ひとつは 風の強い場面においての 「エイムオフ」(ゴールド以外を狙って矢をゴールドに飛ばす方法)の問題です。カーボンアローによって矢が流れることは減り、風のないインドア競技では問題はありませんが、一般的にリングの中心を探せないエイミング方法ではゴールド(中心)以外のポイントを意識的に狙い切ることは不可能です。リングサイトでのエイムオフはないのです。もうひとつは、オールマイティーのリングが存在しない点です。確かに70mに距離を限定するなら問題は小さいのですが、一般には 4つの異なった距離を射ちます。この時同じリングの大きさで、同じエクステンションの長さなら、そのリング内に占めるゴールドの大きさは距離によって異なってしまいます。また天候、特に明るさによってもリングやゴールドの見え方が大きく変化します。これはアーチャーの集中力に影響を及ぼし、しいてはエイミング精度に関係してきます。
 このように、実はピンサイトもリングサイトもそれぞれが長所と短所を持ち合わせていて、どちらが良く、どの大きさや色が良いかは個々のアーチャーが自分のレベルや置かれた状況によって判断するしかないのです。

 では、もっとも多く使われ一般的なピンサイトですが、実はいくらピンで狙うといってもリングがそこに影響を及ぼしていることを忘れてはなりません。
 アーチャーは無意識にピンの回りのリングを意識しています。もし、ピンがリングの中心になかったり、リングの大きさや厚さ、色などが自分の集中力向上に適さないものであったなら、射つ瞬間に意識と実際のピンの位置にズレが起こることを覚悟しなければなりません。
 必ずピンはリングの中心に、垂直方向(水平方向は弓の傾きを感じるには感心しません)からセットするようにしましょう。

copyright (c) 2010 @‐rchery.com  All Rights Reserved.
I love Archery