アーチェリーに必要な道具 (その弐) 初心者編

 では実際に初心者の方は、何を揃えたらいいのか?!!
 結論を言います。「初心者は、まだ道具にお金なんか掛けなくていいのです!」「備品やレンタル用品で十分です!」。
 しかし、この実行は結構難しい問題です。なぜなら、その初心者がどこでアーチェリーを始めるかで、状況がまったく異なるからです。大学や高校のクラブで始めるのか、公営のレンジ(アーチェリー場のことです)で始めるのか、あるいはアーチェリーショップや民営のレンジで始めるのかによっても違うでしょうし、それぞれの指導者の考えやクラブの方針もあるでしょうし、そこに備え付けてある備品やレンタルの状況にもよるでしょうし、商売が絡む場合もあるはずです。
 そして、もっと難しいことがあります。アーチェリーの「初心者」とはどこまでが初心者なのか??? という問題です。 広辞苑で引いてみると、初心者とは「初めて習う人。習いはじめの人。習ったばかりの人。」となっていますが、この境目によって「いつ」「なにを」買うかということになってきます。もしこれを読んでいるアーチャー(アーチェリーをする人をこう呼びます。)がいたら、どう思いますか? 「全ア連の登録をしたら・・・・」「グリーンバッジを取ったら・・・・」。これは学生なら無条件に登録するでしょうし、あてになりません。「30mで300点が出る・・・」(すいません、初心者の人にはまだ分かりませんよね)。これもちょっと。。。。そうなると、これはどうでしょうか、「30mを安全に射てる!」(30mで一応全部の矢が的に乗る)。これなら結構いい線じゃないですか?!! もしこの条件が初心者と中級者(?)の境目だとするなら、微妙な部分ですが「クリッカーを使う」(そういう道具があるのですが・・・)という条件もあるかもしれません(これについては後で話します)が、これに関連して「自分の道具(弓)を持つ」というのはどうですか? このへんでしょう。なぜなら、自分の弓でない(備品の弓や矢を借りて)道具では、なかなか30mは飛ばないだろうし、そんなに当たらないだろう、と言うことです。
 これに賛同(?)してもらえるなら、中級者は「自分の弓(マイボウ)を持ち、30mで矢が的に全部的中する技能を持ち、ひとりで安全にアーチェリーを楽しめる人。」ということになり、この逆が初心者の定義ということです。
 そうなれば、30mが射てるようになり、的にも当たるし、アーチェリーがオモシロイし、さぁやるぞっ、となったら初めて初心者卒業であり、そこでやっと道具を買えばいいということです。 どうですか。そんなにお金を使うことを考えずに、まずはアーチェリーを始めてみませんか、、、、 (^_^;)
 とは言っても、実際にこの前提でアーチェリーを始めるには、「練習用(初心者用)の道具が、クラブやレンジに豊富に揃っている」場合です。しかし残念なことに、そのような恵まれた環境は稀なのが実情です。
 そこで一般的な状況として、どんな道具が必要なのかを簡単に説明しましょう。
 これが最初に弓を射つようになった時に必要な道具です。しかし勘違いをしないでください。まったくの初心者が始めてアーチェリーを習いに行って、その日から毎日矢が射てる(矢を放して飛ばせるという意味)わけではありません。はじめは矢もつがえずに弓だけを引きフォームを覚える段階や、矢はつがえてもまだ発射はしない段階もあります。そんな時期も過ぎて、さぁ射つぞっとなった時に↑こんな道具が必要ということです。そして30mを射つまでは、基本的にこれらの道具は備え付けのものを借りれば十分です。(揃っていればですが・・・)
■ ボウ(弓)
 この時期に自分の弓を購入することは稀です。しかしそれは例えば写真のような弓で30mが射てないとか、試合には出られないということでは決してありません。「強さ」(引いた時の負荷)の問題からです。アーチェリーの場合、競技者であっても男女であっても使う弓の強さに制限やクラス分けはありません。その距離を飛ばせる強さの弓であれば、何を使ってもいいのです。
 しかし、初心者から強い弓は引けません。まずは体格や男女の違いなどにもよりますが、「10ポンド」とか「15ポンド」程度の弓から引き始めてフォームを覚えます。そして初めて矢を放せるのは「20ポンド前後」です。アーチェリーの場合、道具においては「ポンド」や「インチ」といった単位を使うことがよくあります。10ポンドは約4.5キログラム、15ポンドで約6.8キログラム程度の弓です。ちなみに一般的に中級者が試合で使う強さは、男子であれば「36〜42ポンド」、女子で「32〜37ポンド」程度でしょうか。ですからこのくらいの強さの弓が引けるようになるまでは、弓を買う必要はありませんし、その間は備品やレンタルの弱い弓で十分だということです。
 そしてこの段階の弓で、弓の付属品として最低限必要なのは「サイト」と「レスト」くらいです。サイトとは照準点となる「サイトピン」(これで的を狙います。的を射つようになると、このサイトピンを必要に応じて上下左右に動かして使用します。)を含んだ照準装置の総称です。一番最初の、まだ矢もつがえないフォームを覚える段階では必要はありません。
 レストは矢を乗せるツメのような部分です。初心者は最初、力が入ってなかなかレストにうまく矢を乗せて引くことができないので、写真のような形状ではない初心者用のレストを使うこともあります。
 また、この時期には「クッションプランジャー」や「クリッカー」「スタビライザー」などといった道具はまだ必要ありません。
■ アロー(矢)
 矢には「スパイン」と呼ばれる「硬さ」があります。これは矢の「しなり」を表すもので、矢の太さや長さ、その肉厚によって変わります。使う弓の強さや矢の長さによって、使う矢のサイズが異なるのです。ということは、弓の強さがどんどん変わっていく(強くなっていく)初心者の時期には、矢のサイズもどんどん変えていかないとダメだということです。そして、この初心者の段階では弓や矢の精度は求めません。スパインがあっていなくても、まったく問題はないし、当たり外れ以前のフォームを覚える段階だということです。そのため、矢も弓同様に備え付けのレンタルの矢で練習するのが普通です。
 ただし、まったくの初心者の段階から中級者になるまでの段階で練習用の矢を購入することはよくあります。アルミの矢や練習用の矢を買ってマイアローとするのです。これはマイボウを持つ以上に一般的な練習のステップです。しかしこの矢を試合で使ったり、マイボウでも同じように使えるかは別の問題です。マイボウ(30mを射って当てる段階)には、それにあったマイアローが必要になります(ちなみに矢は最低6本を射つので、予備を含めて1ダースを購入するのが一般的ですが、10本であっても問題はありません。)が、初心者は初心者なりに矢を傷めたり、それなりにスパインや長さが合っていないと練習には使えないので矢だけは練習用として購入する場合があるのです。
 ちょっと写真↑を見てください。初心者の段階では、先にも書きましたが弓を引く手(右手)にまだまだ力が入るため、引いた時や射つ時に矢が「レスト」から落ちて発射することがあります。そんな時、矢が短いと手に突き刺さって大怪我をしていまいます。そのため初心者は10センチ程度長目の矢を使うのが一般的であり重要なことです。(左の写真) 
 それだけではありません。最初に書いたように初心者が初心者でなくなる境目に、「クリッカー」を使うか使わないかということもあります。クリッカーとは「魔法の板」で、矢を引く長さを一定に保つための道具だけではなく、初心者が最後に悩む「ハヤケ」と呼ばれる病気を治す特効薬でもあります。(これは病気になった時に話しましょう。)
 しかしこのようなことがあるために矢の長さも本来の長さではなく、それによって矢のサイズ(スパイン)が確定しません。だからこの時期に使用する矢は、真っ直ぐに飛ぶとか当たるというものではなく、安全にアーチェリーをしてフォームを覚えるための道具ということです。
 そのため、初心者用の矢は「カーボンアロー」でも「アルミアロー」であってもサイズ(スパイン)は一応それなりのサイズが選ばれるだけで、大事なのは矢の長さです。
 また、そのシャフトに取り付けられているハネ(ベイン)も「ビニール(ゴム)」や「鳥羽根」などいろいろありますが、特に備品の矢で鳥の羽根が使われるのには意味があります。矢のサイズがあっていないと、発射の瞬間にハネがレストや弓に当たって出て行きます。そうするとスパインが合っていないのに加えて、矢飛びが極端に悪くなってしまいます。そのため、矢が弓に当たってもハネが逃げてくれる(柔らかいので)鳥の羽根を初心者では使うことが多いのです。また同じ理由から「コックフェザー」(雄羽根)と呼ばれるハネをハンドルとは逆側に向けて必ずつがえることも教えられるのは、このためです。(逆につがえると、まともにハネが当たってしまうのです。)
 ということで、基本的には自分のフォームがある程度出来てきて、力も付いてくるまで弓も矢も購入する必要はありません。フォームが出来て、初めて道具を購入するかを考えれば十分です。
 
 そして、弓や矢以外にも多少の道具が必要です。プロテクターとしての付属品などです。
 これらも基本的には備品で十分なのですが、金額的に弓矢より安いのに加えて、個人使いのため汗で汚れたり、クセがついたりするので初心者用として購入することがよくあります。
■ グラブ(グローブ)
 弓を引く指にかぶせるプロテクターです。マイボウを持つようになる頃には「タブ」と呼ばれる道具に変わりますが、初心者の間はストリングの感覚がつかみ易いのでグラブを使います。
 使う期間は短いのですが、汚れやすく指の型も残ってしまう(クセが付く)ので初心者は購入することがよくあります。
■ アームガード
 これも必ず必要な道具で、中級者になっても必要です。そのためグラブと合わせて最初に購入することもありますが、備品で大丈夫なこともあります。(初心者の時期は、ストリングが腕に当たりやすいので、大き目の初心者用の形状のものを使うこともあります。)
■ クイーバー
 矢を入れて腰に下げる道具です。これも最初のうちは矢といっしょに、借り物で十分でしょう。
■ ボウスリング
 矢を射つようになると、弓が手から離れて飛んでいかないようにハンドルを手に結び付けるヒモです。最近は上級者においても「靴ヒモ」などを使っていることが多いので、わざわざ製品を購入することもないでしょう。
■ チェストガード
 胸や衣服にストリングが引っかからないようにするプロテクターです。これは必要な人とそうでない人がいます。とりあえずは備品で十分でしょう。
 
 ということで、これだけ揃えば、とりあえずはアーチェリーを始められるでしょう。初心者には何もいりません。まずは、近くの初心者教室に一度参加してみてください。続けるかは、それから考えましょう! 道具やお金のことを考える前に。ともかくは射ってみましょう。
 前に飛んだら、アーチェリーでーす。

 

 初心者用の道具と中級者用の道具では違うのです。それは中級者用と上級者用とが異なるのと同じことなのです。
 が、なぜかアーチェリーをやろうかという人は、初心者であるにもかかわらずオリンピック選手と同じ道具を使いたがります。自分の道具を早く持ちたがります。これは指導者やアーチェリーショップの責任でもあるのですが、ともかくはその傾向が強いのです。
 しかしそれらは決して安い道具ではなく、また初心者に使い易い道具でもありません。持っているからうまくなったり、点数が出るというものでもありません。逆に高価であり過ぎるがために、続けることが困難になる場合もあります。まずはお金を使うことは考えずに、アーチェリーを楽しんでください!!

■ オマケ (どんなカッコでやるの?)
 アーチェリーをこんな格好でやっていただけると、ほっておいても教える人が集まってくるのですが、スポーツのできる服装(?)であればいいでしょう。若い女性は短いスカートがいいでしょう。それ以外の女性や男性は適当に・・・・・・。 (^^ゞ

 上着は「ポロシャツ」か「Tシャツ」がいいでしょう。冬場の寒い時期は「トレーナー」や「ジャージ」が必要ですが、あまり左腕(右射ちの場合)がゆったりしすぎず、左胸にポケットやボタンがないものがいいでしょう。
 下はジャージかズボンでいいのですが、競技(試合)では、ジーンズは禁止。手を伸ばして指先より短いズボンも禁止されています。また上もノースリーブやタンクトップは禁止されています。でも、練習ではともかくはスポーツをする格好であれば問題ありません。
 靴は「運動靴」であれば問題ありません。色の指定もありません。ジョギングシューズでもテニスシューズでも、かかとのない靴ならいいです。
 夏場は「帽子」も持参してください。あまりツバの大きくないものがいいでしょう。

 では、グッドラック!! ともかくは、一度やってみてください。そしてオモシロそうなら、続けてください。
 応援しています。頑張って!!!
 
注 : 実際には、初回の講習でグラブとアームガードは購入を義務付けたり、クラブなどでは結構早い段階で矢や弓を買わせるところがあったりします。それらはそれぞれの考えや方針があってのことです。すべてがここに書かれているような状況ではありませんので、ご理解ください。

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