ダンパーの硬さを変える

 スタビライザーの根元に可動性(スタビライザーの根元がグニグニ動く)を与える道具に、「ダンパー」という呼び名が付けられたのは、結構近年になってからです。ヤマハがダンパーと呼ぶようになる以前は、その特許を持つ Hoyt (今のHoytではありません。本当のホイットおじさんのHoytです。)が発明した「ティー・エフ・シー」(これは上下スタビライザー用の短いロッドを可動させるものでした。)が一般的な呼び名であり、センタースタビライザー用に改良した「オムニカプラー」(Fred Bearが考えた商品で、1972年ミュンヘンオリンピックでジョン・ウイリアムスが世界記録でゴールドメダルを獲得した時に「ティー・エフ・シー」と一緒に使用した道具です。↓)がそれに次ぐ名称でした。
 しかしこれらの製品を知っているアーチャーも、その可動のシステムは「ゴム」によって与えられたものでしょう。知る限り、「ティー・エフ・シー」がゴムで動き出したのは1970年からです。それ以前(発明当初)の Hoytに装備されていた「ティー・エフ・シー」は「バネ」(スプリングコイル)で可動していました。グニグニではなく、ガシャガシャと動いていたのです。そのガシャガシャは微振動を取る動きではなく、発射時の大きなショックを一気に解消するような動きでした。微振動程度のショックでは動かなかったのです。 
 それはともかく、近年ダンパーウエイトを含め、「ダンパー」なる商品のほとんどが可動部の調節(硬さ調整)ができなくなっています。
 このことを今のアーチャーは当たり前と思い、硬さを変える(選ぶ)こと自体は考えず、デザインと色だけで商品を選んでいます。これはスタビライザーのロッドの硬さ(性能)を考えずに、デザインと価格で選ぶのと同じことです。ところが、硬さを変えることができるダンパーを使ったことのあるアーチャーなら、ダンパーの硬さが振動吸収やショック解消に大きな意味を持つことを体感しているはずです。逆に言えば、硬さを間違えばショックも微振動も解消されないばかりでなく、増幅することもあり得るのです。 硬さやゴムの特性は、性能そのものです。
 「ティー・エフ・シー」は、それを締め込むことでゴムの逃げ場をなくし硬くします。「オムニカプラー」は、種類の異なるゴムパーツを交換することで硬さを変えました。このようにダンパーの硬さを変えることができるコピー商品(?)は、現在も入手できます。
 実は先日、予想以上に柔らかいというかスムーズな動きをする「ダンパー」を見つけました。そこで持ち主に聞いてみると、同じ思いからダンパー内部の「ゴム」を自作(交換)したというのです。そうなのです。今使っているダンパーも、軽いということで大昔に某メーカーが試作したものを持ち出して使っていたのですが、どうもゴムが硬すぎて満足がいっていませんでした。いつかゴムを変えようと思いながら、ずるずると使っていたのですが、決心しました。
 以前「パワーダンパーR」を作った時に、ゴムメーカーさんからもらった「低反発(振動吸収)ゴム」のサンプルを試したかったのです。手元のサンプルは、ゴム状のものとスポンジ状のものがあったのですが、今回はスポンジ状を試すことにしました。ちなみに、その時にも専門家に聞いたのですが、多分現在市販されているダンパー類で低反発などの特殊素材を使っているものはないはずです。ただの普通のゴムばかりです。
 そこで、まずはそれまでに入っていたゴムを取り出し、ほぼ同じ大きさに加工しなければなりません。打ち抜き型があるといいのですが、そうもいかないのでよく切れるハサミで丸く切って、後は布ヤスリで削って形を整えました。最後は希望の厚さにスライスして、できあがりです。難しい話ではないのですが、「低反発ゴム」を使うところが今回のミソです。思いつきで加工したのが土曜日。早速翌日の試合で射ってみたのですが、同程度の硬さに調整したのですが、音が一層静かに、おとなしくなりました。やはり、いいです。
 最近の弓の傾向として、なんでも付いていればいいというのは、間違いです。例えば最初からダンパーやそれに類する重りや出っ張りが付いていれば、ないものより静かになったりおとなしくなるのは当たり前のことです。それは弓の性能が向上したこととは、決してイコールではありません。本当にいい弓、ちゃんと調整された弓は、それだけで性能を発揮します。何もなくても静かでおとなしい弓こそが性能であり、それになにかを付加することで、より性能が向上したり、自分に合った道具となります。ところが最近のメーカーは、技術やノウハウのなさを目先の奇抜さで隠し、ユーザーを欺きます。そしてユーザーも最初から付いた不要なものによって、本来の性能までも見誤ってしまいます。付いているからいいのではなく、付いていなくてもいい弓を選んで、自分に合ったより良い道具にすることこそが重要です。
 そんなわけで、使用した日本独自の特許でもある「低反発ゴム」の商品名はメーカーさんの希望でお教えできませんが、最初に見せてもらったダンパーを作られた「貫太郎」さんのメイルを紹介します。
 
>TFCの中の振動吸収材の名前ですが、「スーパーゲル」といいます。
説明書きをそのまま書きますと、、、、
スーパーゲルは一言で表すと「限りなく液体に近い固体」と言えます。常温だけでなく、-20℃から75℃の広い温度帯でも、94パーセント以上の高い衝撃吸収率を誇る衝撃吸収&防震素材です。
とあります。買ったのは、心斎橋の東急ハンズの6F?の素材売り場です。価格は504円です。
あのTFCに入っているのはこれです。
このスーパーゲルは、グニャグニャの素材で円形に切るのが至難の業です。ただし、おおよそ丸く切って押し込めばよいので、実用上は問題ないと思います。
振動吸収には、「ハプラゲル」という素材もあります。ゴムの2倍以上の吸収性とあります。これの大きいのを、シャフトカッターの下にひいて使っていますが、驚くほど、振動がなくなりました。
振動吸収剤で、「ソルボセイン」は有名ですが、厚みと加える重量が決められていて、TFCを締め込む力がどれくらいかが解らないため、使用は難しそうです。
 どうですか、素材の変更。ダンパーに限らず、使う場所や使い方、いろいろと思いつきませんか?

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