「V-Force」用の競技用ポイントを作る

 カーボンアローが初めて世界の桧舞台に登場したのは、1983年ロサンゼルス世界選手権の時です。リック・マッキニーとダレル・ペイスが同点で1位、2位をこの最新の矢で獲得しました。しかしこの矢はあくまでプロトタイプであり、使用はアメリカ選手に限られていました。まだテスト段階でのデビューです。矢の名前はEASTON「A/C」。現在のA/C/Eのベースとなった、アルミコアにカーボン繊維を巻き付けたシャフトですがまだ樽型は採用されていません。しかしA/Cはこのあと商品化されても価格の問題だけでなく、性能や品質面で世間に受け入れられることはありませんでした。まだカーボンアローがもたらす革新の大きさと方向性が定まっていなかったのです。
 実際カーボンアローが世界に受け入れられるのは、この6年後。1989年、ローザンヌ世界選手権でフランスのBEMAN社が「DIVA+」で突然のデビューを果たしてからです。これが世界初のオールカーボンアローの華々しい登場でした。ほとんどの選手がまだアルミアローを使う中、FITAシングルではなくグランドFITAラウンドであっても、無名のソ連選手がこのカーボンアローによってダレル・ペイスの偉大な世界記録を10年ぶりにやっとたったの1点更新した時からです。この大会で初めてEASTONは屈辱を味わい、君臨してきた世界の頂点の座を譲り渡しました。(この数年後、EASTONはBEMANを買収し傘下に収めるのですが、、、) とはいえこの後、すぐに世界が変わったのではありません。現在のようにカーボンアローが世界に浸透するには、過渡期として数年の歳月が掛かり、選手もメーカーも試行錯誤を繰り返しました。
 
 アルミからカーボンへの移行に10年近い歳月を要した原因のひとつを、その最初である1983年の出来事が表しています。この世界選手権は翌年にロサンゼルスオリンピックを控え、リハーサル大会であると同時に選手にとっては前哨戦でした。結果、1984年ロサンゼルスオリンピックではダレル・ペイスが同じA/Cを使って圧勝と同時に2個目のゴールドメダルを獲得します。しかし彼だけが特別であり、超越していたのです。
 この2試合、ダレル・ペイスだけが唯一90mから30mまでのすべての距離を一貫して、同じカーボンアローで戦ったのに対し、マッキニーは長距離でA/Cを使ったものの短距離は従来のアルミアローで戦いました。これこそがアルミを超える圧倒的なアドバンテージを持つカーボンアローにとっての、唯一のマイナス要因です。(仕方のないことではありますが。)
 太さ(外径)です。「A/C」の太さが「6.0ミリ」。マッキニーが短距離で使った「XX75-21径」が「8.3ミリ」です。この差は当時、そして今でも世界記録を狙う選手にとっては、カーボンアローの特性を差し引いたとしても大きすぎるものです。あなたが36射した中でさえオンラインの判断を迫られるものが1本か2本はあるはずです。ましてや世界記録を目指し1点差で明暗を分ける世界の桧舞台においてこの差は、ラインにタッチするかしないかがたとえ1本であっても天と地の差に値します。現にこの時もマッキニーは、最終日50m336点/30m353点でダレル・ペイスに追いつき同点で逆転したのです。アルミの太さが勝利をもたらしたのです。
 あれから30年の歳月が流れ、カーボンアローもルールも変わりました。そんな中で近年、再び「太い」カーボンアローが見直され(使われ)る場面が増えてきたようです。もちろん、風の吹かない距離の短いそして1点が明暗を分けるインドア競技においてはすでに大口径シャフトが使われ、アルミだけでなくカーボンの太いシャフトも作られています。Victory「VX-23」がそのシャフトであり、外径はルール上で許される最大の「9.3ミリ」です。
 ところがここに来て、射つ本数が少なく距離が短く(コンパウンドの50mルールもそうです)、そして比較的風の影響を受けないフィールド競技において、あえて太いカーボンシャフトが使われだしています(多くとは言いませんが)。
 一般的なカーボンアローのVictory「VAP」の約「5.5ミリ」に対し、昔のアルミアローより少し細めの「7.5ミリ」ほどのカーボンアローが競技で使われています。たとえばVictoryの「V-Force」がそうです。
 「V-Force」は「VAP」同様にV1グレードという曲がり精度がアルミのX7なみに高いシャフトがあるので、特にコンパウンドの方から問い合わせをいただきます。今のところこのポイントは、ワンピースの「80グレイン」か「100グレイン」しか重さの選択肢がありません。何とかして欲しいとの要望です。そこで、またまたの思いつきでVAP同様に新潟県燕市でオリジナルの競技用に使えるポイントを作ってみることにしました。高精度はもちろんですが、先端形状と最大重量をいろいろ検討中です。
 VAP/ACE用X10用とは異なり、軸に太さがあるので重さは十分確保できます。180グレインくらいを最大にしたいと思っていますが、逆にブレイクオフの時の折り易さなどを考えて形状を考える必要がありそうです。
 ということで、今しばらくお待ちください。予告でした。。。。

 最終ではありませんが、試作サンプルお見せします。こんな感じです。上の↑図面とも少し異なりますが、、、いろいろ試しています。
 写真はフルレングスで「160」グレインですが、最終はもう一段増やして「180」グレインから20グレイン刻みで「80グレイン」までのブレイクオフにします。先端形状も、もう少しシャープな感じにします。
 通常のカーボンシャフトより太いので重さの確保はできるのですが、逆に10グレイン刻みになると折る部分が細かくなりすぎるのと、折るための溝で重さが取られてしまいます。
 世界もこの手のシャフトでトップヘビーが増えてきているようです。もう少し、お待ちください! ちなみに、乳がん撲滅キャンペーンに協賛する「ピンクプロジェクト」シャフトも「V-Force」シャフトと同じです。

 完成しました。「V-Force」および「PinkProject」シャフト用ヘビーポイント、「VF-Hポイント」です。
 前回ご案内の試作とも少し形状が異なります。最大「180グレイン」でそこから20グレイン刻みでブレイクオフで「80グレイン」まで調整可能です。形状はプロセレクトオリジナルなトップヘビーで先の矢に弾かれることが少ないこの形状です。
 すでに大好評で多くのアーチャーにお使いいただいているX10用「PS10-Hポイント」とACE/VAP用「PS-Hポイント」との比較がこれです。
 ポイント先端長さはACEなどと同じ「16ミリ」。フルレングス「180グレイン」から「80グレイン」まで20グレイン刻みでブレイクオフできます。
 ぜひ太目のカーボンそしてオンラインのタッチに興味があれば、お試しください。日本の高精度、高品質の燕市製。純日本製品です。

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