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Eagle-K その背景(14)

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性能のすべては「差し込角度」で維持される。。

1972年にテイクダウンボウが登場してこの1980年まで、どのハンドルもすべてが木製ワンピースボウの形状を継承していました。HOYTにしても、「TD」はワンピースボウの「PM」の形をしています。どのメーカーも今見ても分かるように、木の弓を金属で作ったようなデザインばかりです。そんな中で金属やダイキャスト製法の特性や特徴を生かして、素材や製法からデザインしたハンドルは「EX」が最初でした。

今までにない直線的なシルエットに、伊豆田さんのアイデアである断面形状「T-Bone/L-Bone」を組み入れ、強度や耐久性に優れた、軽量でバランスの良いハンドルを作りました。

1977年にヤマハに入った時、すでに「YtslⅡ」はほぼ出来上がっていました。しかし、「EX」はベアボウのエピソードから始まり、最初から最後まで自分の思う弓を形にしていったモデルです。

ハンドル形状に合わせて、日本人の手に合わせて新たに「MX」グリップをデザインしました。そして「カラーグリップ」「レスト&クリッカースケール」は世界初のアイデアでした。また、世界初の「2トーンカラー」ハンドルやアーチャーがハンドルをデコレーションできる「ステッカー」のアイデアは、FITAのルール改正のきっかけになりました。

そんな中で最も重要なものが、1985年「EX-α」から搭載したポンド調節にかかわる「ダブルアジャストシステム」です。

HOYTは1983年から、本格的なポンド調整機構を搭載した「GM」を発売します。しかしこのシステムにヤマハは懐疑的でした。というより、信用していませんでした。この時点ではまだメーカー間のハンドルとリムに互換性はありませんが、自社のリムに対して少なくとも「2ポンド」の幅を差し込み角度で持たせる(動かせる)というのは、メーカーとしては致命的な過ちだったからです。

それは本来弓が持つ性能を放棄することです。ましてやHOYTはリムを寝かせた状態で「表示ポンド」としました。ということは、表示よりリムを起こして2ポンドアップさせるというのです。起こしても寝かせても2ポンドは、どちらも本来の性能ではありませんが、リムは寝かせるより起こす方が、安定がなくなりバタつくことになります。HOYTのやり方はどれをとっても、メーカーが自社のハンドルとリムに対して行うべき改良ではありませんでした。

それに対してヤマハが行った「ダブルアジャスト」は、「ポンド調整」と「ティラーハイト(バランス)調整」を別の部分に担わせるというものです。

HOYTはリムの角度を「リムボルト」の可動だけで行ったのですが、ヤマハはリムボルトでの可動範囲を1ミリ程度にし、ここはティラーハイト調整に留めました。そしてポンド調整は弓本体に取り付けた「スペーサー」と呼ぶ、厚さの違う接合板で行うようにしました。スペーサーは3種類あり、厚さで4ミリの幅があります。そして一番リムを起こした状態を表示ポンドとして、そこから4ミリ(表示ポンドの約10%)寝かせる(ポンドダウン)ことを可能としました。

そしてユーザーには表示ポンドよりポンドダウンが可能なことと、ポンドダウンは、メーカー本来の性能を保証するものではないことを明示しました。ユーザーは本来の性能ではない軽いポンドのリムから徐々に本来のポンド(表示)に練習を重ねていって、最終的にメーカーの薦める性能と希望の強さを獲得するというものです。

今でも、もしリムの差し込み角度を変更するのであれば、メーカーにとってもアーチャーにとっても、これが最良の方法と考えています。

ワンピースボウの時代から、ハンドルとリムの接合角度というのは唯一無二の状態であり、それがメーカーが最善と考え最高のパフォーマンスを発揮する位置であるはずです。にもかかわらず、差し込み角度を変更したり、互換性の名のもとにリム本来の差し込み角度が分からなくなることは、アーチャーにとって決して良いこととは言えないのです。

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