Eagle-K その背景(19)

サンドイッチも、切り方次第。

「サードアクシス」の話をしてきましたが、こんなに弓の精度や性能、そして品質が悪くなった最大の原因は何だかわかりますか?

それは意外にも「カーボンアロー」なのです。1990年代から、シャフトはアルミからカーボンに変わりました。これによって、的中はともかくとして、矢が勝手に飛んでくれるようになったのです。それが今のような「何でもあり」の状況を生み出しました。

昔、アルミアローの時代には矢が重く太く、ある程度の弓の強さがなければ50m以上の長距離は飛びませんでした。風にも簡単に流れました。

男子が90mを射つには表示で少なくとも38ポンド、女子の70mなら36ポンド以上は必要だったのです。それに加え弓の性能を最大限に発揮するために、身長(ドローレングス)にあった弓の長さやチューニングを必要としました。

ところが今はどうでしょう。男子で34ポンド、女子で30ポンドの表示があれば70mを飛んでしまいます。それも一律に、男子68インチ女子66インチの弓を売りつけても、ドローレングスなど無関係に「矢は的に届く」のです。

このことがアーチャーに、弓の性能を見る目や努力を放棄させています。そしてそれに甘えた知識も節操もないメーカーやショップが、良くもない弓や安い弓を高くで売っているのです。

「日本の弓で日本人が世界の頂点に立つ」。この意味を忘れてはなりません。誰が最高の性能や精度を自国より先に他国に提供するでしょうか。ヤマハはプロトタイプであっても、日本選手より先に外国選手に使わせてはいません。

ところが今では、どんな製品にでも高いお金を出して買ってくれる上得意様に、定番になるかどうかも分からない試作品を商品として先に売りつけることは普通にあるようです。

話を戻しますが、矢が飛ぶか飛ばないかは、素人でも分かる方法があります。技術がなくても、冷静に判断さえすれば「サイト位置」(サイトの高さ)で分かります。それともう一つは、「矢速」(飛んでいる速さ)です。

ところが、カーボンアローのお陰で誰でも矢が的に届いてしまうことで、分かりづらくなっていますが、正直多くの弓では昔の弓よりサイトが下がって(矢速が落ちて)いるでしょう。これは昔なら、矢がサイトピンに当たって、サイトが取れなくなり、素人でも分かりました。

また例えば、同じ40ポンドの弓を射つ時、安定性や精度は別にして、単純に速く飛ぶ方がアドバンテージは大きくなります。逆の言い方をするなら、同じスピードなのに片方は40ポンドでもう片方は42ポンドなら、40ポンドのリムの方が性能が勝るに決まっています。

昔はこれが「的に届くか届かないか」、少しの風で「的に当たるか、地面を射つか」という目に見える基準で素人のアーチャーでも分かったのです。ところが今ではどんな弓でも。どんな射ち方でも一応は的に乗ってしまうがために、素人では判断や比較ができなくなってしまいました。

ではそんな状況で速く飛ぶ弓を作ろうとする時、メーカーは何の苦労もなく簡単に素人や子供を騙せるマジックがあります。

そのひとつの方法は弓の長さです。異なるサイズのリムではなく、例えば同じ「68インチ」と謳っていても、実際には少し短めのリムにすれば、矢速は速くなります。

リムを作る時、カーボンコンポジットと呼ばれる「たい焼き方式」ではできませんが、一般的な貼り合わせの「サンドイッチ方式」の場合を想像してください。

この場合、リムの全体形状を決める「プレス型」(リムの接着時に押さえ付ける型)があります。これで押さえて全体を成型した後でサイド面を削ったりチップや差込部分の加工を施します。そこでメーカーとしてはいくつかのプレス型を持つのですが、実際にはできるだけ共通で使用して、後加工でモデルやサイズを変えることが一般的であり効率的です。

例えば、こんなまったく異なるモデルのようですが、差込部分を見れば後加工で長さや寸法を変えていることは簡単に想像できます。それにダンパーを付けるために開発されたかのようにメーカーが説明するマウント(ブッシング)も、加工時にリムを押さえセンターを決めるために必要な基準点であり、リムを工具に固定するための穴であることも想像できます。

このように、同じプレス型で単純に短く切り落とした「最新性能のニューモデル」を新価格でデビューさせることは簡単です。それを上得意様に試してもらって、評判や品質が悪ければ翌年モデルチェンジすればいいのです。

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