矢速だけが性能ではありません。
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このようなマジックはリムやハンドルの長さだけではありません。もっと簡単で、効果的なインチキもあります。それは「ストリングハイト」(Brace Height)です。
ハンドルの長さや形状が変わっても、リムの「1st Axis」の基準角度は設計上不動でなければなりません。そのうえで、そこからドローレングスやストリングハイトも決定付けられます。ところがどうでしょう。25インチあるいは27インチハンドルの最新、最上級モデルが、同じ25インチハンドルより1インチ近くハイトが下がったり、あるいはそれが23インチのショートハンドルより低く設定(推奨)されたりするのです。
弓の基本設計が変わっていないにもかかわらずの、突然の出来事です。
「ストリングハイト」はリムの基本性能以上に、弓が矢に与えるエネルギーを変化させられる部分です。ほんの少し下げるだけで、リムを短くしたりハンドルを長くする、あるいはストリングの太さを変える以上に矢速アップに貢献します。それにリムへの負担が小さくなるので、折損などのトラブルも減ります。メーカーにとっては弓の性能を除けば良いこと尽くめというか、望ましい状況(方法)なのです。
しかし「性能」こそが弓の命であるからこそ、メーカーの都合を後回しにして研究開発を行うのです。ストリングハイトが下がれば、ストリングが矢に触れている時間と長さが長くなります。その分、矢は弓(アーチャー)の影響を受けやすくなるため、的中精度は低下します。
今使っている弓で、ストリングハイトを1インチ下げればすぐに分かることです。簡単に矢速もサイト位置も1ポンド以上アップした効果が出ます。しかし、グルーピングとリリース感覚そして弦音も大きく変わります。
だからこそ逆に、距離の近い、風が吹かないインドア競技では、1インチ以上ハイトを上げて的中精度の向上を目指すのです。
昔々、ワンピースボウの時代、ストリングハイトは「9~10インチ台」でした。これは当時ストリングの素材が「ダクロン」(ナイロン)で、伸び率が非常に大きかったからです。発射時にストリングが伸びることで、ストリングハイト位置より2インチ近く下がった所でノックがストリングから離れるため、矢への影響が大きかったのです。
それが1975年に「ケブラー」(芳香アラミド繊維)が登場してからは「9インチ台」に下がりました。ストリングが伸びなくなったからです。そして原糸の耐久性や重さの進歩はあっても、ケブラーから現在に至るまで原糸の伸び率はほとんど同じです。
ところが問題は1980年代から現在に至る、「高密度ポリエチレン」のストリングになっての、2000年頃からです。プレス型も同じで何ら変わりのないリムで、ハンドルも変わりないにもかかわらず、ストリングハイトは徐々に下がっていったのです。今の皆さんは、弓の長さはあるでしょうが、だいたい「8インチ台」で射っているのではありませんか。
にもかかわらず、リムもハンドルも同じなのに、突然さらに68インチでも「7インチ台」推奨という数字がでてくるのです。
7インチ台はどう考えても異常です。ハイトをここまで下げれば、ハンドルが長くなった分のリムへの負担を軽減できます。矢速も大きく向上します。しかし、アーチャーのミスは確実にに伝わり、扱いにくい弓になることは目に見えています。これは進歩ではなく、メーカーの都合と怠慢に他なりません。
カーボンアローになり、矢速も速く、矢離れもよくなり、逆にアーチャーのミスが出やすくなった時代においてこそ、ストリングハイトが高いなかで性能を競うことこそが、メーカーの技術力とノウハウだとは思いませんか。
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