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弓の強さ(ポンド)を表すときには、2つの方法があります。「表示ポンド」(Bow Weight)と「実質ポンド」(Actual Weight)です。
実質ポンドは個々のアーチャーが実際に弓を引いて、フルドロー時の強さを表します。これはそれぞれで異なります。
では表示ポンドはというと、これは個々のリムに書かれている強さ(数値)のことで、基本的に同じ基準において測定されています。アメリカの統一団体AMO(現在はATA)と呼ばれる組織で決められているもので、以前は弓のバックサイドから矢を28インチ引っ張った時の強さ(ポンド)を表示するのが一般的でしたが、1998年からはピボットポイント(グリップの底)から26-1/4インチを引っ張った時の強さで表すことになり、ほとんどのメーカーで採用されています。
この基準よりドローレングスが短ければ表示ポンドより弱い実質ポンドになり、これより長く引かれれば表示以上に強い実質ポンドになるというわけです。
そこでここからは1979年以前のテイクダウンボウ、あるいはワンピースボウを想像してもらった方がいいと思います。当時、弓の表示ポンドは「1ポンド刻み」で、ハンドルとリムの取り付け角度は一定です。
メーカーは出来上がった弓を測定して、その表示ポンドをリムに書き込みます。この測定には専用の測定機器が使用されますが、多分1/100単位までほとんど誤差なく計ることができるはずです。皆さんが使うボウスケールは、そこまで正確ではないでしょう。
ではその時、小数点以下はどのようにするのでしょうか??
これはメーカーによってさまざまです。「切り捨て」て表示するメーカーもあれば、「四捨五入」して表示ポンドを決めるメーカーもあります。
切り捨てなら、「40ポンド=40.9~40.0ポンド」です。これを超えれば41ポンドか39ポンドのリムです。ここでなぜ切り捨てにして、四捨五入で「40ポンド=40.4~39.5ポンド」の範囲にしないかといえば、それもないわけではないのですが、常識あるユーザーから40ポンドを買ったのに40ポンドないじゃないか、と聞かれた(クレーム)場合に回答する場面を想定すれば、切り捨てで設定するのが常識あるメーカーの姿勢かもしれません。
そのため、現実には同じ表示ポンドの弓であっても1ポンド近い差がある場合があったり、40ポンドと書かれていても40ポンドに達していない場合もあるわけです。これはメーカーの基準の違いによるものであり、メーカーを責めるわけにはいきません。
そこで現在に戻ります。
今の弓はほとんどすべてに「ILF」(International Limb Fitting)と呼ぶオープンパテントによって、他社メーカーとの互換性が持たれると同時に、リムのハンドルへの差し込み角度を変える機能が付いています。
ではあなたのハンドルとリムが、同じメーカーの製品であったとして、そのリムの表示ポンドが確保される(測定された)、ハンドルのボルト位置(デフォルト位置)はどこか知っていますか??
多分知らない、というか誰も教えてくれないはずです。
ほとんどのメーカーが「デフォルト」の位置を説明していません。デフォルトとは初期値であり、「表示ポンド」もそうですが、それ以前にこの位置にセットすれば、メーカーの推奨する仕様なり性能が満たされる(保証される)という非常に重要な位置です。
にもかかわらず、リムがメーカーの異なる他社のハンドルにセットされた場合、その状況は知るすべもありません。ところが、どのメーカーもデフォルトを示さずに、ほぼ共通して「約10%のポンド調節ができます」と謳っているのです。
こんないい加減なことがあるでしょうか。「10%」のポンド変更とは、一般的にリムボルトで「約4回転=約4ミリ」の可動を意味します。40ポンドの表示リムなら「10%=4ポンド」です。そしてリムの表示は「2ポンド刻み」です。
表示「40ポンド」のリムは、44ポンドにでも36ポンドにでもなることがあり、そこに1ポンドの誤差もあるというのです。
差し込み角度は2ミリも変われば、全く違う性質のリムになります。
「デフォルト位置」はそのリムが最高の性能と性質を発揮する唯一の位置であり、それは1ミリたりとも動かすべき場所ではありません。もしその位置からリムを起こせば、リムはバタつき安定が欠けます。また逆に寝かせれば、安定はしてもリム全体が美しいカーブを描かず、本来の性能が発揮できません。すべてを満たす最良の位置こそがデフォルトなのです。
しかしすでにパンドラの箱は、メーカーの手によって開けられているのです。
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