「ハンドルが折れたりするんですか?!」
リムには折れたり剥がれたりするものがあり、それが高価で高性能なモデルに多いという話をしました。安いリムや練習用のリムより、競技用のリムほどよく壊れているのです。
その理由は、高価なリムにはCFRP(カーボン)が使われ、それも複数枚接着されるため、当然接着技術やノウハウ、そして設備なども必要ですが、それに加えて競技用は高ポンド用で作られます。低ポンドのFRP(グラス)製の初心者用とは全く異なります。そのため当然、高速高反発で復元を繰り返すので、性能と耐久性を両立させようとすれば、素材や設備だけでなくノウハウや知識、そしてメーカーのポリシーや姿勢が求められるので、簡単なことではありません。
あまり認識がないかもしれませんが、アーチェリーのリムほど湾曲(変形・復元)し、そこから性能を得るという道具は少ないのです。テニスラケットやスキー板と比べても、リムがどれほど過酷な条件や形態で使われ、性能を求められているかがわかるはずです。
正直ヤマハが撤退した後、スタンダード(世界標準)が消え失せたと言いましたが、20年経った現在、当時の性能(特にスピードとコントロール性を持ちながら、壊れることのない)を上回っているモデルは数えるほどしかありません。
そこで余談ですが、リムが「壊れる」時、どんな状態を思い浮かべますか? 誰もが「リムが折れた」と叫びます。ところが実は同じ壊れる、でも2つの状況があります。「折れる」と「剥がれる」です。ユーザーにすれば、どちらも同じ「壊れた」であり保証はどうなると頭に浮かぶだけかもしれませんが、この2つは作る側(メーカー)からすれば全く違う原因であり、対応が全く異なります。
リムが壊れた時、そこをよく見てください。折れているか剥がれているかをよく観察するのです。折れてから剝がれた場合や剥がれることで折れた場合もあるので見極めは難しいのですが、一般的に折れるのは基本的な設計ミスや素材の品質に問題がある時です。それに対して剥がれるのは、接着不良や製造管理の悪さなどです。
そこで話を変えて、ハンドルの話です。ハンドルが折れるのは、リムほどよくは見かけません。では折れないかというと、そうではありません。先に言っておきますが、「形あるものいつかは崩れ」ます。この世の中に「永遠」などはないのです。ただし、どのくらいで壊れるか、いつ折れるかは重要です。
そこで「過剰品質」という言葉をどうとらえますか。シューティングマシンで、実質50ポンドで10万射しても折れないハンドルがあるとします。多分このハンドルは皆さんが毎日射って、20年使っても折れることはないでしょう。女子の選手なら、半永久的に使えます。
30ポンド5000射で折れれば問題ですが、50ポンド4万射(これはヤマハが行っていた実射促進耐久テストの公表値です)も持てば、実際の使用では10年以上は平気です。
簡単に壊れる商品は困ったものですが、壊れなさすぎる商品もメーカーにとっては困りものなのです。メーカーは品質と値段、耐久と性能にどこかで折り合いをつけるか、つけなければなりません。
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