Eagle-K その背景(4)

「形あるものはいつか崩れる」

それが世の常であり、アーチェリーの世界においても然りです。
たとえば昔、Hoytはテイクダウン最初の「TD1」でハンドル折れ、「Gold Medalist」でハンドルの曲がり、そしてNCハンドルになってからも「Avalon」で写真のようにクラックを経験しています。ヤマハも「YtslⅡ」でハンドル折れを起こしました。そして他のメーカーにおいても同様に、大なり小なりの問題を抱えてきたのが現実です。

しかし、最近では「金属疲労」という言葉が一般化したために、金属は折れない、大丈夫といった神話を信じる人も少なくなりました。そしてリムも高ポンドであれだけ大きな反発を繰り返せば、壊れない方が不思議と思ってくれるようになりました。しかし、ハンドルもリムも永遠はなく、いつかは壊れるのです。
ただし、その限界をどの辺に設定するかは別の問題です。

ハンドルを折れないようにするには、単純に太くすれば簡単です。しかしそれでは重くなりすぎます。リムにしても耐久性ばかりを追いかければ、過剰品質となりコストの上昇は避けられません。メーカーとしては値段と品質の折り合いをどこでつけるかが重要な課題となってきます。

では、どのような基準で弓は作られているのか? メーカーはどんなテストを行っているのか?

近年、ヤマハの撤退以降は詳細とまではいかなくとも、メーカーは常識的なデータすら公表しなくなり、実射や実戦でのテストも行わずに商品を発表するのが当たり前になってしまいました。何シーズンも続く「定番」と呼ばれるモデルはなくなり、「名器」となる伝説も消え失せました。メーカーは新商品の名のもとに、毎年のようにモデルチェンジやマイナーチェンジのを行い、クレーム対策をしているのです。

そこで、世界最高水準の品質を誇った、我日本の「ヤマハアーチェリー」がハンドルとリムに行っていた「耐久テスト」を今一度見てみることで、予備知識としての弓の寿命や限界を知っておくのもいいかもしれません。

ヤマハが対外的に「公表」していた耐久性の基準は、

 ① 実射促進耐久テスト

「弓の強さ:50ポンド基準」×「耐久性:6万射以上」

ここで言う、「耐久性」は弓の強さと強い相関関係にあるので、ヤマハが実際に製造・販売していたリムの「最上位のポンド数の耐久性」を基準において公表しています。それが表示50ポンドという訳です。

では、50ポンドの弓を誰が射つのか。普通のアーチャーが1年間で射つ矢の数は2万本を超えれば、それは結構練習している方でしょう。週に4日以上、1日100数10本を射つと2万射を超えます。とはいえ、実射耐久テストを人間が行うのでは何年かかるか分かりません。そこで使われるのがシューティングマシン、それも耐久テスト用のマシンです。

これを使って「26インチ引き/40%相当の衝撃負荷空射ち」を、1本のテストサンプルに対して6万回繰り返します。

ここで言う「衝撃負荷」とは、単純なドローイングの繰返しの静的応力負荷の反復だけでなく、実際のシューティングで弓に作用する衝撃力と同等以上の衝撃力(ショック)を与えるテスト方法を指し、「40%相当」のレベルとは、空射ちのショックと実際のシュートでのショックとの中間レベルの強い衝撃力と考えればよく、分かり易く言えば矢をつがえずに26インチを引っ張ったところから弦を放す(空射ち)動作をハンドルを固定した状態で行うのです。

 ② 熱衝撃(熱冷クリープ)テスト

「(-20℃/16時間 + 50℃/8時間)× 10サイクル」

  (28インチ引き/連続フルドロー状態保持)

この「熱冷クリープ」は零下20度の冷凍庫と50度の乾燥炉を往復するものですが、単にストリングを張った弓というだけではなく、グリップとストリングの間につっかえ棒のようなものを入れて、28インチを引っ張った状態の形でこれらの過酷な条件に置くものです。

 ③ 耐乾・耐湿(乾湿クリープ)テスト

 ④ 耐候(耐紫外線・耐雨)テスト

上記 ① ② のテストは開発段階での仕様決定の重要な評価基準であり、実際にはこの2つのテストを組合わせた一連の「複合促進耐久テスト」として評価します。また、並行してそれぞれ個別テストでの評価も行われます。

上記 ③ ④ のテストは、新素材・新製法の開発や新規の樹脂・塗料・接着剤等の使用に対する評価基準として、主に化学的な特性変化のチェックのために行う耐久テスト基準です。

 複合促進耐久テストの実施例

熱冷/3サイクル→実射/2万射→熱冷/3サイクル→実射/2万射

→熱冷/4サイクル→ 実射/2万射

開発段階では、「実射促進耐久テスト」を主体に、試作品/サンプル商品等が折損/破壊するまで徹底的に行う「極限耐久性テスト」を実施します。

どの部分が、どれだけの使用数(射数)で、どのような「壊れ方」をするのかを徹底的に調べてデータを積上げ、この膨大なデータを基に、個々の商品について限界強度/限界寿命を高めるハウツーを設計に生かします。

一方、生産段階における「製品の定常的な品質管理基準」として、定期的に工程からサンプルを抜き取り、同様の耐久テストを実施します。

以上、上記 ① ② ③ ④ の耐久テストは、それぞれの商品が「定められた基準を満たしているか」を評価する「耐久性評価テスト」として実施されます。

お分かりいただけるでしょうか。世界最高水準の品質は、地道なテストの積み重ねで保証されているのです。

ちなみに、Avalonのクレームのような重大な問題も、本来は動的状態でのテストなり検査が確実に行われていたなら、単純な応力集中の問題として事前に発見できたはずです。また、実際にそれらのノウハウが蓄積されていたなら、もっと迅速な対応も可能だったはずです。

ある意味、これこそが現在のNC旋盤によるハンドル製作の最大のメリットでもあるのです。

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