「EX」は元々は「ベアボウ用」の弓なんです。
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1912年1月30日 – 2002年5月25日 1月7日

1982年に登場したヤマハ「EX」。実はこのハンドルだけは、ちょっと特別でした。
1969年にアーチェリーを始めて、最初のマイボウだけは「Black Widow TF」でしたが、親のすねをかじりっぱなしで2本目は「HOYT 4pm」。そのあと1974年に「HOYT TD2」を手に入れ、1976年にヤマハ「Ytsl(Citation)」に換えるまで、10本以上のHOYTを使っていました。
1977年にキャンベラで2番になってヤマハに転職してからは、ヤマハ最後のテイクダウンモデル「Forged」の最初のところまで、ヤマハの弓づくりにかかわります。その中で正直、すべてのメーカーを含めて、当時の弓の中で「EX」が最高の名機だったと思っています。自分が作ったからというわけではありません。
ヤマハの弓の設計は、日本のアーチェリーの頭脳ともいえる「伊豆田忠男」さんがいるのですが、普通は伊豆田さんとの会話の中でいろいろなアイデアが出て、それを具現化していくのですが、この「EX」だけはちょっと違っていました。
1980年パーマストンノース世界フィールドに行った時、日本のベアボウの連中と話をする中で、ベアボウ用のハンドルが作れないかということになりました。その理由というのが、この時ヤマハの選手は「YtslⅡ」を使っていたのですが、当時は「アマチュアリズム」と共に「Bare Bow」という言葉も、その名の通り厳格に存在する時代でした。スタビライザーはもちろん、クッションプランジャーもウエイトも一切の付属品は認められていませんでした。
そんな時代の弓具検査で、YtslⅡに標準装備されている「ビルトインダンパー」がルール違反となりました。ロッドやウエイトが付いていなくても、内蔵されているだけでスタビライザーとみなされたのです。その結果、ダンパーの中身すべてを取り外すことを要求され、それで何とか検査を通過するというハプニングがあったからです。
帰国後の報告の中で、まず重量を増やせられないか。当時はマグネダイキャスト製法ですが、単純に素材をアルミに換えてはという話もあったのですが、溶解温度の違いから金型が持たないと却下になりました。そんないろいろな話の中で、「ウインドウの形状は狙いやすく、角ばって・・・」ということがあり、まずはデザインをということになりました。
当時ヤマハは「意匠課」というデザインに関する独立した部署があり、ここがピアノから弓に至るまで、意匠については絶大な権限を持っていました。そこと意見交換することになったのですが、担当者はアーチェリーは素人です。
そして数週間後に出てきた数枚のベアボウのラフスケッチの中に、直線的で今まで見たこともないハンドルの絵があったのです。直感でこのハンドルが欲しい、カッコいいと思ったのです。
ベアボウの皆さんには申し訳ないのですが、YtslⅡの次期モデルはここからスタートしました。
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